不動産取引や工事契約での印紙税の取扱

以下の記事に印紙税に関する実務上のまとめがありましたので,参考までにご紹介します。
(THE GOLD ONLINE「不動産取引で収入印紙が必要になる文書」)


● 印紙税が必要になる主な文書

以下のような文書については,印紙税法により収入印紙の貼付が必要になる場合があります。

1.不動産売買契約書,金銭消費貸借契約書,領収書等

(印紙税法第2条,別表第1-6項 第1号文書、第17号文書)

不動産売買にかかる契約書,金銭消費貸借契約書(例:住宅ローン契約書),および領収書には,収入印紙が必要なケースが多く見られます。

2.工事契約書,注文書,注文請書

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

建設工事等に関する契約書や注文に伴う書類も,印紙税の対象となります。

3.不動産管理委託契約に関する契約書等

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

不動産の管理委託に関する契約書も,「請負に関する契約書」として印紙税の対象になる場合があります。


●領収書の取扱について

不動産取引における領収書については,発行者が誰であるかにより、収入印紙が必要かどうかが異なります。

  • 個人が私的に発行する場合:
     → 通常、収入印紙の貼付は不要(営業に関しない受取書)
  • 法人や不動産賃貸業を行っている個人が発行する場合:
     → 収入印紙の貼付が必要になる場合が多いです

(出典:国税庁「営業に関しない受取書」)


● 印紙税の軽減措置がある文書

以下の契約書については,印紙税の軽減措置が講じられています。

  • 工事請負契約書
  • 不動産売買契約書

(出典:租税特別措置法 第91条)


●電子契約にすることで印紙税が不要に

契約書や受領書を電子化することにより,印紙税の課税対象外となります。

  • メール添付のPDF契約書
  • クラウドサインなどの電子契約サービスを使用した場合

これらは「紙の文書」に該当しないため,印紙税は課税されません

(出典:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱」)


⚠ 現状の課題:電子契約に対応していない事業者が多い

理論上は電子契約で印紙税を回避できますが,現時点では電子契約を導入している会社や業者はまだ少数です。相手方の合意やシステム導入も必要になるため,導入には一定の準備が必要です。


● まとめ

  • 不動産売買や工事契約などでは,収入印紙が必要な文書が多く存在する。
  • 契約書の電子化によって印紙税を回避することが可能
  • ただし,実務上はまだ電子契約に対応していない事業者も多い。

また,企業が対外的に出す文書には,印紙税のかかるものも多々あります。
特に法務部門では,対応のために印紙税に関する参考書を1部以上常備し,必要な場面で迅速に確認・対応できる体制を整えることをおすすめします。

文書作成時には印紙税の要否を事前に確認し,可能であれば電子契約化によるコスト削減も検討してみてください。