OpenAI社が新たな動画生成AI「SORA 2」の提供を開始しました
(参考:OpenAI社「Sora 2 is here」)。
リリース直後からSNS上では数多くの生成動画が投稿されており,既存の映画やドラマ,ライブ映像に酷似したものから,アニメーション作品まで多様です。「SORA」のロゴが動画内に表示されていなければ,生成AIによるものかどうかを判別するのは非常に難しくなっています。
学習データをめぐる懸念
SORA2の登場と同時に最も大きな論点となったのが,生成AIが用いる学習データです。
公開されている生成結果を見ると,商用ソフト化されているアニメーション作品や,70年代・80年代の映像まで学習に利用されていることがうかがえます。
これらは著作権や出演者のパブリシティ権を侵害する可能性が高く,本来であれば無断利用は避けなければならないものです。
しかし現実には,そうした素材を基にしたと思われる生成動画がすでにSNS上にあふれています。
OpenAI社は将来的に「オプトアウト方式」(原則として利用を許可し,権利者が明示的に禁止した場合のみ利用しない)を導入する意向を示していますが,この方式では権利者の側に過大な負担を強いることになり,権利保護が十分に機能しないという懸念があります。
(参考:日本経済新聞「動画AIのSora、著作物勝手に使う『オプトアウト方式』に不満の声」)。
クリエーター市場への影響
もう一つ見逃せないのが,クリエーターの市場への影響です。高度な動画が簡単に生成できるようになると,従来はクリエーターに支払われていた報酬が,AIサービス提供企業へと流れる構造が生まれかねません。特に中小規模のクリエーターにとっては,市場そのものが急速に縮小するリスクがあります。
技術の進化と社会の選択
生成AIの技術的進化は目覚ましく,これまでユーザーが手軽に享受できなかった映像や音楽コンテンツが瞬時に手に入る時代が到来しています。この流れ自体を止めることは,現実的には難しいでしょう。
しかし,日本はアニメーションやゲームなどのコンテンツ産業を国家戦略として重視してきました(例:内閣府「クールジャパン戦略」)。
この重要な産業を守り,生成AIが進化しても,クリエーターを保護する方向に社会がなっていくことを願わずにはいられません。