農地の所有権移転を行う際には,いくつかの重要な手続きや条件があります。農地を所有・利用する際には,農業委員会の許可が必要です。これに加え,農地の転用(非農地化)を伴う移転や,農地のまま移転する場合など,さまざまな方法があります。
農地の所有権移転の方法
1.農地の転用後の移転
農地を転用してから移転する場合,市街化区域にある農地であれば,原則として許可が得られやすいです。
ただし、農業振興地域にある農地では,原則として転用は許可されません。
(参考 農林水産省「農業振興地域制度と農地転用許可制度の概要」)
2.農地のまま移転
農地を転用せずに移転する場合,譲受人が耕作することが前提となります。最近では、耕作面積の要件が緩和されてはいますが,依然として譲受人が耕作者であることは条件として維持されています。
(例 長野市「農地法の手続きについて」)
条件付所有権移転仮登記のメリットと注意点
農地の所有権移転には農業委員会の許可が必要ですが,許可の取得が難しい場合,「条件付所有権移転仮登記」が利用されることがあります。この仮登記にはいくつかのメリットがあります。
- メリット
他の人に所有権が移転されるリスクが低く,万が一,他の人に移転されても,後日農業委員会の許可が得られれば仮登記の権利者に所有権を戻すことが可能です。
しかし,仮登記の状態で譲受人が利用を始めてしまうケースが増えています。これは法律上の正式な譲受ではないため,本来ならば農地法に反する行為です。農地法第3条,同第4条では,許可のない利用は禁止されています。
また,許可がないまま長期間放置された場合,元の所有権や仮登記の状態での相続登記が必要になることがあります。このような状況では,土地を不要と感じた場合に元の所有者に所有権が戻るケースも散見されます。
まとめ:早めの対処が重要
農地に仮登記がされている場合,状況を把握し,早めに対処することが非常に重要です。後のトラブルを避けるためにも,適切な手続きと許可取得を早めに進めましょう。