代表取締役の住所が登記簿に非表示可能に|実施状況と注意点

令和6年10月より,株式会社の登記簿(登記事項証明書)における代表取締役の住所表示について,非表示とする制度が始まりまっています。

これまで,登記簿に記載される代表取締役(社長・会長等)の住所は公開情報とされており、誰でも取得できる登記事項証明書で確認できました。

しかし,近年の個人情報保護意識の高まりや,著名企業の経営者のプライバシー確保を背景として,制度が見直されたかたちです。


制度開始後の実施件数

法務省が発表したデータによると,令和7年3月末時点での制度利用実績は以下のとおりです。

  • 【新規設立】非表示申出件数:1,564件
  • 【設立以外(選任・重任等)】非表示申出件数:4,975件

(出典:法務省「代表取締役等住所非表示措置の申出による実施件数(月報)」)

また、日本経済新聞の分析によると,新規法人における住所非表示の割合は約3%程度とのことです。
(日本経済新聞社「社長の住所は公開する? 与信のジレンマ、新規法人の非表示3%」)


非表示による懸念点

代表取締役の住所を非表示とすることには,いくつか注意点や懸念事項もあります。

特に金融機関や取引先にとって,代表取締役の住所は以下のような理由で重要な情報です。

  • 与信判断のための参考情報(信用調査)
  • 会社に連絡がつかない場合の実質的責任者への連絡先
  • 会社が実質的に活動しているか否かの判断材料

このような背景から,信用力が十分でない新興企業や小規模事業者が住所を非表示にすると、かえって疑念を持たれる可能性もあります。


住所非表示が向いている企業とは?

一方で,以下のような企業にとっては,住所非表示制度は有効なプライバシー保護手段となり得ます。

  • 上場企業や大手企業など,すでに信用基盤のある会社
  • セキュリティ上の懸念がある経営者
  • 一定の資金調達ルートが確保されている会社,売上が親会社のみの完全子会社等

制度を利用するには?

この住所非表示の登記は,以下の手続きと「同時」にしか行うことができません。

  • 会社の設立登記時
  • 代表取締役の選任・重任時
  • 代表取締役の住所変更時

そのため,該当の手続きが発生した際には,直ちに住所非表示を検討する必要があります。

手続きの際は,司法書士へご依頼いただくことをおすすめします。必要な書類や申出の形式など専門的な手配が必要ですので,早めのご相談が安心です。

当事務所では,住所非表示制度に関するご相談・手続のご依頼も承っております。新設会社の登記や,代表取締役の変更登記の際には、お気軽にご相談ください。