代表取締役の住所を非表示にできます

非表示の措置をすると,多少なりとも支障があるようです。

株式会社の社長など,代表取締役は住所と名前が登記されています。
そのため代表取締役の住所は,登記情報や登記簿謄本でお金を払って取得すれば分かる仕組みです。

この代表取締役の住所を簡単にはわからないようにするために,本年10月からこの住所を非表示とする措置をとることができるようになります。
(参考 法務省:「代表取締役等住所非表示措置について」)

ただ,この措置は,登記のときに申出をしなければならず,あとからすることができません。現在登記されている代表取締役の住所を非表示にするためには,別の住所を表示する登記(住所変更や,新たな就任の登記)をともに行う必要があります。
(解釈上,重任や同一人物の「退任と就任」と同時の登記では非表示にすることができません。前の登記の表示が残ってしまうからです。)

また,法務省から以下の注意点が示されています。

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

法務省 「代表取締役等住所非表示措置について」(上記引用先参照)

非表示措置といっても,市町村までは表示されるようです。非表示措置には支障が生じることもありますので,注意しましょう。

今年の年度末の3/31は「日曜日」

公告や催告の開始日には注意が必要です。

日曜日が期限の末日の場合は,期間はその翌日を満了日とするよう定められています。(民法第142条)

本年は3/31が日曜日のため,1か月の公告期間の必要な公告で,2/29に知れている債権者への公告等をしてしまった場合には(例 会社法第449条 資本金の減少等),1か月の満了日は4/1となってしまい,効力発生が可能な日は4/2となってしまいます。(2/29に公告してしまった会社はもう遅いですが‥)
(参考 株式会社兵庫県官報販売所「官報公告の掲載日と公告期間満了日、登記の効力発生日について」)

そのほか,日曜に取引慣行のない契約の満了日も3/31までのものは,4/1が満了日になりますので,注意が必要かと思います。

新株予約権(ストックオプション)が未上場会社で発行を容易に

現行,非公開会社の新株予約権の発行と権利行使価格の決定等には株主総会の特別決議の必要があるところ,未上場のスタートアップ企業には「権利行使価格」と「取得可能期間」を取締役会で決められるよう緩和することが検討されているようです。
(日本経済新聞:「未上場の新興企業、株式購入権の発行容易に」)

新株予約権は,税制適格ストックオプションの制度の行使期間の伸長がされており,
(経済産業省:「ストックオプション税制」)
今後,年間の限度額の上限引き上げが検討されているようです。
(日本経済新聞:「ストックオプションの税優遇、年3600万円に上限引き上げ」)

新株予約権は,行使価格や取得可能期間によっては,他の株主や新株予約権者と比較して有利発行となるおそれがあるため,既存の株主利益のためにも慎重であってほしいものです。

定款作成支援ツールで会社設立も楽々

多少,知識が必要なので,会社設立は専門家(司法書士等)にご依頼いただければと思います。

日本公証人連合会では,「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」というウェブサイトで,「定款作成支援ツール」を提供しています。
(日本公証人連合会:「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」)

このツールを使ったところ,当職においては,20分くらいで,定款を作成できました。利用上の注意点としては,
1.エクセルのマクロを有効にする必要がある
2.ファイルのプロパティのセキュリティで「許可する」にチェックする必要がある(Window10以上)
です。

あくまでも,定款と実質支配者の申告書の作成のみができ,以後の電子署名や定款申請等には,別なツールが必要ですが,定型的な株式会社の設立にはこのツールは便利かと思います。ご活用ください。

令和5年度の休眠会社の整理

今年も始まったようです。

毎年法務省は,株式会社と一般社団法人,一般財団法人を対象に一定期間登記をしていない会社・法人にについて,通知や官報に公告を行って,届出のない場合にはみなし解散の登記をする手続きしています。

今年も上記の通知が発送されたようです。長期間役員の変更登記等をしていない株式会社などは,放置しているとみなし解散の登記をされてしまうので,注意が必要です。
(参考:法務省「令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」)

また,登記の長期の放置は,法律上過料制裁の対象となりますので,その点をご注意ください。(会社法第976条第1号,一般社団法人及び一般財団法人法第342条第1号)

官報による決算公告は,わずか1.8%

株式会社で「官報」での公告を指定してあるうち,決算公告を実際している会社は1.8%にとどまるとのこと。
(参考:東京商工リサーチ「官報で決算公告、株式会社のわずか1.8%」)

非公開会社といってもある程度,債権者や従業員,地域等に社会的責任を果たすため,情報開示されることを望みます。

令和4年度の休眠会社の整理

毎年,休眠会社の整理が行われています。
(法務省:「令和4年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」)

12年以上登記されていない株式会社は,公告と通知が行われ,2か月以内に登記申請や届出がなかった場合には,みなし解散登記が行われます。(会社法第472条)

ここのところ毎年行われているものです。

会社の代表者の住所の表示が継続される

インターネットから有料で取得できる,登記情報における会社の登記の情報で,代表取締役等の会社の代表者の住所について,9/1から非表示となる予定であったようですが,法務省は,反対意見が多いことを理由に,表示を継続することにしたようです。
(東京商工リサーチ:「登記情報提供サービス、代表者住所の表示を継続へ 省令変更に「反対」多く」)

なお,DV被害者の住所非表示については,予定通り9/1に開始されるようです。

外国会社の登記の推進

メタ社(Meta Platforms. Inc.)とTikTok社が外国会社の登記をしたようです。
(日本経済新聞:「メタとTikTokが登記 法務省の要請に応じる」)

法務省が電気通信事業を営んでいる外国会社に登記を要請していたようです。外国会社は,日本で継続的に事業をするには,登記をしなければなりません。この規定に適合させるための対応かと思われます。

電子提供措置が会社の登記事項に

9/1施行の会社法において,定款の定めに基づいて株式会社の取締役が株主総会資料等の情報をウェブサイトに掲載し,株主に対してそのアドレスを株主総会の招集の通知に記載した場合には,株主の個別の承諾を得ていなくとも株主に対して株主総会参考書類等を適法に提供したことにする制度,「 電子提供制度 」が創設されることになりました。
(改正会社法第325条の2 電子提供措置)

この電子提供制度の定款の定めは登記事項になります。(法務省民事局長 「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」)

また,この改正で,支店所在地における支店の登記が廃止されるようです。
(法務省 「商業登記規則が改正され、令和4年9月1日から施行されます」)