パワハラ(パワーハラスメント)は,多くの人がその定義や適用範囲に疑問を抱くことが少なくありません。これは,言葉として広く知られる一方で,具体的な行為や状況の認識が難しいためです。今回は,その定義と最近の話題である「自爆営業」への対応について解説します。
パワハラの定義
厚生労働省は,パワハラに関する指針を令和2年に発表しています(令和2年厚生労働省告示第5号)。この指針では,パワハラを以下の3つの要素で構成されるものと定義しています。
- 優越的な関係を背景とした言動
上司から部下,または特定の役割や立場を利用して行われる行為を指します。例えば,地位や権限を利用しての圧力や命令などが該当します。 - 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
業務の指示や指導であっても,その範囲を逸脱した不適切な行為はパワハラとされます。過度な叱責や不要な業務負担がこれに該当します。 - 労働者の就業環境が害されるもの
心理的・身体的負担を引き起こし,労働者が仕事を続けられない状態に追い込まれる場合です。
これらの3つの要素すべてが満たされた場合に、パワハラとして認定されます。
「自爆営業」とパワハラ
最近,厚生労働省は指針に「自爆営業」をパワハラの具体例として明記する方針を示しました。(参考 毎日新聞社【厚労省、「自爆営業はパワハラ」指針に明記へ 賃金格差公表拡大も】)
「自爆営業」とは,企業が従業員に対して商品やサービスを購入させる行為を指します。この問題は以前から労働環境に悪影響を与える行為として指摘されており,パワハラに該当すると考えられます。
自爆営業はパワハラの要件を満たすケースが多いため,指針に明記されることになりました。
今後への期待
「自爆営業」がパワハラの具体例として記載されることにより,職場での不適切な行為を減らす効果が期待されます。これにより,従業員が安心して働ける環境が整備されることを望みます。