【要警戒】NISA口座・相続と同時に非課税は消える

NISA制度は、配当税や譲渡益税の非課税を受けられることに加え、金利上昇が物価上昇に追いついていない状況等も背景に、爆発的に普及しています。昨年3月末時点で、2,646万口座に達しています。
(参考 金融庁「NISAの利用状況」)

世代別では、30代、40代の利用が多いものの、60代以上の口座数も4分の1に上っています。相続の関係する世代においても、NISAは無関係とはいえない状況です。
(参考 日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況」)

そこで気になるのが、NISA口座の相続です。主な注意点は、次のとおりです。

・亡くなった時点で非課税措置は終了する
・相続人の管理口座に移す場合、取得日と取得価格は相続の日(亡くなった日)の時価が基準となる
・相続人のNISA口座には移管できない
(参考 大和証券「生涯非課税だからこそ気になる!?新NISAの相続」)

「生涯非課税」という表現から、死亡後も非課税が続くと誤解されることがありますが、非課税措置はあくまで口座名義人が存命中であることが前提あり、また、相続手続きが完了するまでは、証券会社上は被相続人のNISA口座として管理されます。しかし、税務上は死亡日に非課税措置が終了しています。

そのため、死亡日以後に生じた配当等については課税対象となり、手続きが遅れた場合には、配当税等の追納が生じる可能性すらあります。

NISA口座は税制上のメリットが大きい一方で、相続時には独特の取扱いがあります。相続が発生した場合には、預貯金や不動産と同様に、証券口座の有無を早期に確認し、速やかに解約や移管の手続きを進めましょう。

名義預金は通用しない・・国税庁が示した最新事例

例年どおり,前年度分の相続税に関する税務調査の状況について,国税庁から公表がありました。
(国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」)

本資料では,主に次の点がまとめられています。

・相続税の実地調査の状況
・相続税の簡易な接触の状況
・相続税の無申告事案に対する実地調査の状況
・相続税の海外資産関連事案に対する実地調査の状況
・贈与税の実地調査の状況

詳細な分析は税理士の先生方にお任せするとして,国税庁のアナウンスを要約すると,おおむね次のとおりです。

相続税については,実地調査が増え,その結果として追徴税額も増加している
 → 調査件数・指摘額ともに,調査が強化されているように感じられる

「簡易な接触」は,件数・指摘内容ともに過去最高水準
 →当局からの電話等による軽度な接触であっても,申告漏れの把握が大きく進んでいる

無申告事案に対する調査では,追徴税額が過去最高
 → 申告していないケースに対する当局の対応が,より厳格になっている

海外資産に関する申告漏れは,件数・金額ともに増加
 → 海外資産についても把握・追及が進んでいることが明確

贈与税は,調査件数自体は減少しているが,追徴税額は増加 

また,本資料には「相続税調査事例」も掲載されています。
特に興味深いのは,事例②の「名義預金」に関するケースです。

被相続人名義の預金口座から,相続人やその家族名義の預金口座へ多額の資金移動が行われており,これについて国税当局は,相続税の納税を免れる目的で,被相続人の財産が相続税の基礎控除以下となるよう,意図的に預金移動が行われたものと認定したようです。

名義預金については,問題となりやすい論点ですが,あらためて十分な注意が必要であることを示す事例といえるかと思われます。

世間で騒がれている個人事業主の社会保険加入サービス

・会社員と個人経営者の健康保険と年金の違い

個人経営者や家族経営の場合,経営を法人化していないケースも多く見られます。法人化した場合と,しない場合の社会保険については,おおむね以下のように整理できます。

健康保険年金
会社員・法人役員
(法人化した場合)
全国健康保険協会や業界の健康保険組合の健康保険厚生年金
個人経営者
上記社会保険の無加入者
(法人化しない場合)
(都道府県の)
国民健康保険
国民年金

・会社員の健康保険と年金

会社員等の場合,健康保険料や年金保険料は,給与や報酬を基準として計算され,給与から天引き(源泉)される形で徴収されます。そのため,いくら支払っているのかを個々人が強く意識することは少なく,法人側が徴収し,健康保険組合や厚生労働省に納付する仕組みとなっています。

健康保険料や厚生年金保険料の額は,過去の給与等をもとに標準報酬月額を定め,通常は法人と会社員等がそれぞれ半分ずつ負担します。

・個人経営者の健康保険の負担が大きい?

個人経営者等の場合,健康保険については,前年度の収入や支出をもとに国民健康保険料が確定され,年金については,1人あたりほぼ固定額の国民年金保険料を支払うことになります。

国民健康保険料は,全額を自身で負担し,かつ前年の所得により金額が決まるため,現在の収入や資産状況と必ずしも一致しないことがあります。この点が,国民健康保険料に対する負担感を高めている一因といえます。

さらに,会社員等の健康保険料や厚生年金は,扶養家族が増えても保険料が直接増加しないのに対し,個人経営者等の国民健康保険料や国民年金は,世帯単位・人数単位で請求されるのが通常です。
そのため,家族が多い場合には,負担感がより大きくなります。

・マイクロ法人を設立で税金の節約と保険料抑制

こうした健康保険料や年金保険料を抑える方法として,いわゆる「マイクロ法人」を設立し,個人経営者がその法人の役員や従業員となることで,社会保険料を抑えるスキームが知られています。

このスキームは,まず所得税から法人税・事業税へ切り替えることで税負担が軽減されるかを検討するところから始まります。ただし,すべての個人経営者にとって有効とは限りません。法人の設立には一定の費用がかかり,設立後も個人と法人の双方について申告が必要となります。

また,法人には,利益がなくても課税される地方事業税の標準課税があり,この負担は法人を解散・清算結了するまで継続します。そのため,法人の維持費用が,個人事業の場合よりも大きな負担となることがあります。
将来的に収入が少なくなる,あるいは休眠状態が予想される場合に,法人を設立・維持する判断は,慎重であるべきと考えます。

・脱法的なスキームか?

こうした法人設立のリスクを避ける方法として,他人が設立した「社会保険料削減のみを目的とする法人」の役員に就任するスキームも存在します。

この方法では,個人事業主として多額の収入があっても,役員報酬を少額に設定することで,その金額を基準とした標準報酬月額により,ほぼ最低額の健康保険料・厚生年金保険料のみを支払います。その結果,国民健康保険料や国民年金保険料の支払いを免れることになります。

しかし,このスキームはいわゆる「脱法的」なものであり,実質的な収入があるにもかかわらず,自治体の国民健康保険財政を圧迫し,また会社員等が支えている健康保険や厚生年金制度を,最低限の負担で利用するものです。
国民健康保険・国民年金制度の根幹を揺るがしかねないだけでなく,健康保険組合や厚生年金制度全体にも悪影響を及ぼすおそれがあります。

さらに,利用される法人の多くは一般社団法人や合同会社であり,役員として登記されることで,利用者の氏名が公的に特定されるというリスクも伴います。
社会保障制度の観点からも,社会的な評価の面からも,このスキームの利用はおすすめできません。

・最後に

税と同様に,社会保険料についても,収入に応じた適正な負担が求められるところです。
今後,社会保険料負担の不均衡に対してどのような制度的対応がなされるかは不透明ですが,収入に見合い,かつ負担感の公平な制度へと改善されていくことを願うばかりです。

名義預金に注意,相続税対策として

知り合いの税理士の先生から伺った話なのですが,相続税の対策として長年よく行われてきた「名義預金」について,今もなお税務調査で指摘される可能性が高いそうです。

いわゆる名義預金とは,親が子どもの名義で預金をし,その名義を利用して相続財産を減らすように見せる方法です。

(参考 国税庁 被相続人以外の名義の財産 )

特に,子どもが未成年のうちからコツコツ預金しているようなケース(よく見かけるのですが)では,一見子どもの財産に見えても,実際には親が管理し,親が自由に動かせる状態であることが少なくありません。

このような場合,税務署から税務調査等で「実質的には親の財産」と判断され,相続税の対象として扱われることがあります。

しかも,過去数十年にさかのぼって調査される可能性があるとのことで,思っている以上に影響が大きいようです。

相続税の対策を考える際は,名義預金も含めて一度状況を整理しておくことが大切だと感じました。

預金の管理状況や入出金の経緯を早めに確認しておくことで,将来のトラブルを避けられることもあります。

詳しくは司法書士ではなく,税理士にご相談いただければと思います。

相続した空き家の売却特例の可否

空き家特例の概要

相続した空き家を売却する際に適用できる「空き家特例」は,父または母が居住していた土地・建物を売却した場合に,所得税の譲渡所得について特別控除が認められる制度です。
(国税庁「相続した空き家を売却した場合の特例 チェックシート」)

空き家増加と特例の注目

空き家が増加傾向にあるようで,将来の売却を見据えて空き家特例の適用を前提とした名義変更を相談される方も増えてきています。
(参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)

注意点

特例の可否判定を十分に検討せずに名義変更をしてしまうと,後から修正することが困難な場合が多いです。
特に「更正登記や再遺産分割協議で是正できないか」との相談が寄せられますが,実際には救済されないケースが多いようです。

裁判例や実務の指摘

専門家となる税理士とよく相談の上で検討する必要があります。
更正登記や再遺産分割協議をしても特例が認められないケースが多いことが指摘されています。
(参考:税法好きAIお嬢(オタク)の実務ノート「【判例×実務】東京地裁R6.9.2判決と空き家特例——譲渡前の『抹消・再登記』で特例適用の余地」)

専門家に相談を

空き家特例を見据えて売却を予定する場合は,国税庁チェックシートで一次確認を行い,必ず税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
名義変更と売却の順番と設計が重要であり,一度進めた手続を後から更正しても救済されないことが多いため,事前の全体の設計で失敗を防ぐようにしましょう。

地価上昇とともに増える不動産税収

近年,都市部を中心とした地価の上昇が続くなか,不動産に関する税収が大きく伸びているようです。

総務省の発表によれば,令和6年度の不動産取得税は4,546億円に達し,これは実に17年ぶりの高水準となったとのこと。
加えて,固定資産税は,過去最高を更新したとのことです。
(参考 日本経済新聞社「地価上昇、潤う不動産税収」)

不動産を取得・保有・売却する過程では,それぞれ異なる税金が課されます。
取得時には不動産取得税,保有時には固定資産税,売却時には譲渡所得税などが代表例です。これらの税は,不動産取引をする方にとって,避けて通れないコストです。

なかでも,相続や住宅ローンの負担が問題となる今,地価上昇に伴って課税評価額も上昇し,税負担が重くなる傾向が見られます。
こうした背景から,不動産にかかる税制を見直すべきだという議論も徐々に高まりを見せているのが,日本経済新聞社の分析のようです。

これからは,税制の動向や評価基準の変化にも注意を払いながら,不動産の取得・保有に関する判断を行うことが重要になるとかと思われます。

【令和7年度 路線価】全国平均2.7%上昇,長野県も0.6%上昇―4年連続の上昇傾向

国税庁が発表した令和7年度年分の「路線価」は,全国平均で2.7%の上昇となり,4年連続のプラスとなりました。観光需要の回復や都市部の再開発が影響しており,地価の上昇傾向が続いています。

長野県でも0.6%の上昇が見られ,昨年に続いてプラスとなりました。特に観光地や交通利便性の高い地域では,上昇傾向とのことです。
(参考:ビジネスジャーナル【路線価4年連続上昇=平均2.7%、インバウンド影響―下落県も減少・国税庁】)

路線価とは?

まず,簡単に「路線価」とは何かをおさらいしておきます。

路線価は,相続税や贈与税の算定基準となる土地の評価額のひとつで,主要道路に面した土地1㎡あたりの価格として,毎年7月に国税庁が発表しています。実勢価格(実際の取引価格)とは多少の乖離があり,納税実務や不動産評価に大きな影響を与えます。

なお,路線価の上昇は相続税や贈与税の評価額にも影響するため,土地を所有されている方は今後の資産対策を検討されることをおすすめします。

相続税調査にAI導入・申告後も“AIの目”に要注意

令和7年(2025年)7月から,いよいよ相続税調査にAIが本格導入される予定です。
これまで人の目と経験に頼っていた税務調査が,データ分析に基づくスコア評価に移行しつつあります。


国税庁,AIで相続税の申告内容をスコア化

国税庁は,相続税の申告データを集約し,申告内容に基づいて「税務リスクスコア」を算出,このスコアをもとに税務署が実地調査を行うかを判断する仕組みに移行するとのことです。
(参考 THE GOLD ONLINE『2025年7月からAIによる相続税調査がスタート!相続税“調査率5%”の裏で迫るAIの目。「申告したら終わり」では済まされない新たな調査体制とは【国際税理士が解説】』)
(参考 日本経済新聞社「相続税もAIが調査へ 国税、申告漏れスコア化で狙い絞る」)

団塊世代の高齢化で相続件数が急増へ

今年度には団塊世代が75歳以上となり,今後相続件数が急増することが見込まれています。
従来の調査体制では対応が難しくなるため,調査効率の向上を目的にAIの導入が進められているという背景があります。


実際の相続税調査の割合は?

令和5事務年度における相続税の課税割合は9.9%ですが,そのうちの調査実績は以下のとおりです:

・簡易な接触:約12.0%
(=簡易な接触件数/申告書の提出に係る被相続人数)

・実地調査:約5.5%
(=実地調査件数/申告書提出人数)

(参考 国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」「令和5年分相続税の申告事績の概要」)

「申告すれば安心」ではない時代に

今後は,たとえ申告をしたとしても,AIの目によってリスクが高いと判断されれば,調査の対象になるという時代になってきます。


早めの対策と専門家相談を

今後,AIによる調査体制が本格化する中では,「とりあえず申告しておけば大丈夫」とは言い切れなくなります。
税理士などの専門家と連携し,正確な評価と適切な資料整理を心がけましょう。

相続税の申告忘れや軽視は,後のトラブルや追徴課税につながる可能性もありますので,くれぐれもご注意ください。

令和7年度より「所得税の基礎控除」等が見直し

令和7年度(2025年度)の税制改正により、所得税の控除制度に複数の変更が加わる予定です。

この見直しは,実務的には令和7年の年末調整から影響が出るため,早めに情報を把握しておくことが重要です。


主な改正ポイント(予定)

1. 基礎控除の見直し

所得金額に応じた基礎控除額が引き上げられます。これにより、多くの納税者がより大きな控除を受けられる可能性があります。

2. 給与所得控除の見直し

現行の給与所得控除の最低保障額が増額されます。

会社員など給与所得者にとって,実質的な減税効果が期待されます。

3. 特定親族扶養控除の創設

新たに創設される控除制度で,

19歳以上23歳未満の親族(所得58万円超123万円以下)について,最大63万円の控除が認められます。

4. 扶養親族等の所得要件の見直し

扶養控除を受けるための扶養親族の所得要件が緩和されます。


実務対応はいつから?

これらの改正は,令和7年分の所得に対する年末調整から適用されます。

したがって,給与計算や年末調整を担当する経理担当者の方は,事前の準備が必須となります。

参考リンク

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

税理士法人 山田&パートナーズ:解説ページ


まとめ

今回の改正は,一見すると納税者に有利な内容も多く含まれていますが,控除額や要件が細かく分かれており,実務上の誤りにも注意が必要です。

必要に応じて税理士等の専門家への相談も視野に入れておくと安心です。

孫への授業料孫の学費を払ったら贈与税がかかる?―非課税にするためのポイント孫への授業料

祖父母が孫の大学の入学金や学費を代わりに払った場合,「贈与税がかかるのでは?」と心配される方も多いのではないでしょうか。

実は,払う「タイミング」や「方法」次第で贈与税がかかる場合とかからない場合があります
今回はその違いについて解説します。

(参考:産経新聞「孫の大学の入学金や学費をおじいちゃんが払っても贈与ではありません」)


贈与税がかからないための条件

以下の条件を満たす場合には、孫の教育費の負担に贈与税はかかりません
(※相続税法基本通達21条の3-4,5):

1.「扶養義務者」からの支払いであること

→ 扶養義務者とは,直系の血族(親や祖父母など)が該当します。
(相続税法第1条の2)

2.支払う目的が「生活費または教育費」に限られていること

→ 教育費には,学費,教材費,文具費などが含まれます。

3.支払は「都度・直接」必要な費用に充てられていること

一方,「預金や株,不動産の購入に使う」などは贈与とみなされる可能性が高くなります。


贈与とみなされるケースに注意

たとえば以下のようなケースでは、贈与税の課税対象となる可能性があります。

  • 学費名目であっても,事前にまとまった金額を渡しただけ
  • 渡したお金を孫が教育費以外に使ってしまった
  • 預金してしまった,使わずに残ってしまった

不安な場合は専門家へ

贈与税や相続税の判断は細かい条件や状況によって左右されます
少しでも不安がある場合には,税理士などの専門家に相談することをおすすめします。