今年(令和6年度)の休眠状態の株式会社や法人への「みなし解散」通知

本年10月10日,休眠状態となっている株式会社や一般社団法人,一般財団法人に対し,管轄の法務局から「みなし解散」の通知が送付されました。

(参考:法務省「令和6年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」)

通知の対象法人について

今回の「みなし解散」の通知の対象となる法人は以下の通りです。

  • 株式会社:12年以上登記がされていない会社
  • 一般社団法人・一般財団法人:5年以上登記がされていない法人

なお,有限会社は今回の対象外となっています。

過料制裁のリスクについて

必要な登記がされていないまま放置されている場合,裁判所から過料制裁が科される可能性があります。特に,取締役の任期が長い会社は,定期的な登記が必要であることを忘れがちです。このような場合は,注意が必要となります。

役員変更の登記期限はなんとかならないものか

厳守されている法人も少なくはないようです。

毎年6月は,3月決算の会社の法人の総会が集中する時期であり,役員の変更も多くされる時期です。この役員変更の場合に行われるべき変更登記は,株式会社の場合,変更から2週間が登記の期限となっています。(会社法第915条第1項)

しかしながら,変更登記には役員の印鑑証明書や住民票等のそろえる書類も多く,取締役会議事録のように出席した役員全員の押印が必要な場合もあるため,2週間はかなりタイトなスケジュールといえます。

この期間を厳守される会社においては,その会社の従業員などが,議事録を持ち,役員のいる仕事先や住まい等をわざわざ回っておられる場合も多く,かなり苦労されている印象です。効率化のするため,今後はマイナンバーカードの電子署名等を用いて議事録をメール等のシステムで回覧する方法をする会社も増えてくるかもしれません。

実際はこの登記期間については法務局の運用でカバーされています。
(参考:法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」)
法律条文上の2週間という期間については,もうちょっと余裕を持たせてほしいと願うばかりです。

代表取締役の住所を非表示にできます

非表示の措置をすると,多少なりとも支障があるようです。

株式会社の社長など,代表取締役は住所と名前が登記されています。
そのため代表取締役の住所は,登記情報や登記簿謄本でお金を払って取得すれば分かる仕組みです。

この代表取締役の住所を簡単にはわからないようにするために,本年10月からこの住所を非表示とする措置をとることができるようになります。
(参考 法務省:「代表取締役等住所非表示措置について」)

ただ,この措置は,登記のときに申出をしなければならず,あとからすることができません。現在登記されている代表取締役の住所を非表示にするためには,別の住所を表示する登記(住所変更や,新たな就任の登記)をともに行う必要があります。
(解釈上,重任や同一人物の「退任と就任」と同時の登記では非表示にすることができません。前の登記の表示が残ってしまうからです。)

また,法務省から以下の注意点が示されています。

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

法務省 「代表取締役等住所非表示措置について」(上記引用先参照)

非表示措置といっても,市町村までは表示されるようです。非表示措置には支障が生じることもありますので,注意しましょう。

今年の年度末の3/31は「日曜日」

公告や催告の開始日には注意が必要です。

日曜日が期限の末日の場合は,期間はその翌日を満了日とするよう定められています。(民法第142条)

本年は3/31が日曜日のため,1か月の公告期間の必要な公告で,2/29に知れている債権者への公告等をしてしまった場合には(例 会社法第449条 資本金の減少等),1か月の満了日は4/1となってしまい,効力発生が可能な日は4/2となってしまいます。(2/29に公告してしまった会社はもう遅いですが‥)
(参考 株式会社兵庫県官報販売所「官報公告の掲載日と公告期間満了日、登記の効力発生日について」)

そのほか,日曜に取引慣行のない契約の満了日も3/31までのものは,4/1が満了日になりますので,注意が必要かと思います。

新株予約権(ストックオプション)が未上場会社で発行を容易に

現行,非公開会社の新株予約権の発行と権利行使価格の決定等には株主総会の特別決議の必要があるところ,未上場のスタートアップ企業には「権利行使価格」と「取得可能期間」を取締役会で決められるよう緩和することが検討されているようです。
(日本経済新聞:「未上場の新興企業、株式購入権の発行容易に」)

新株予約権は,税制適格ストックオプションの制度の行使期間の伸長がされており,
(経済産業省:「ストックオプション税制」)
今後,年間の限度額の上限引き上げが検討されているようです。
(日本経済新聞:「ストックオプションの税優遇、年3600万円に上限引き上げ」)

新株予約権は,行使価格や取得可能期間によっては,他の株主や新株予約権者と比較して有利発行となるおそれがあるため,既存の株主利益のためにも慎重であってほしいものです。

定款作成支援ツールで会社設立も楽々

多少,知識が必要なので,会社設立は専門家(司法書士等)にご依頼いただければと思います。

日本公証人連合会では,「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」というウェブサイトで,「定款作成支援ツール」を提供しています。
(日本公証人連合会:「スタートアップ支援のため、定款認証に関する新たな取組を開始します。」)

このツールを使ったところ,当職においては,20分くらいで,定款を作成できました。利用上の注意点としては,
1.エクセルのマクロを有効にする必要がある
2.ファイルのプロパティのセキュリティで「許可する」にチェックする必要がある(Window10以上)
です。

あくまでも,定款と実質支配者の申告書の作成のみができ,以後の電子署名や定款申請等には,別なツールが必要ですが,定型的な株式会社の設立にはこのツールは便利かと思います。ご活用ください。

令和5年度の休眠会社の整理

今年も始まったようです。

毎年法務省は,株式会社と一般社団法人,一般財団法人を対象に一定期間登記をしていない会社・法人にについて,通知や官報に公告を行って,届出のない場合にはみなし解散の登記をする手続きしています。

今年も上記の通知が発送されたようです。長期間役員の変更登記等をしていない株式会社などは,放置しているとみなし解散の登記をされてしまうので,注意が必要です。
(参考:法務省「令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」)

また,登記の長期の放置は,法律上過料制裁の対象となりますので,その点をご注意ください。(会社法第976条第1号,一般社団法人及び一般財団法人法第342条第1号)

官報による決算公告は,わずか1.8%

株式会社で「官報」での公告を指定してあるうち,決算公告を実際している会社は1.8%にとどまるとのこと。
(参考:東京商工リサーチ「官報で決算公告、株式会社のわずか1.8%」)

非公開会社といってもある程度,債権者や従業員,地域等に社会的責任を果たすため,情報開示されることを望みます。

令和4年度の休眠会社の整理

毎年,休眠会社の整理が行われています。
(法務省:「令和4年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について」)

12年以上登記されていない株式会社は,公告と通知が行われ,2か月以内に登記申請や届出がなかった場合には,みなし解散登記が行われます。(会社法第472条)

ここのところ毎年行われているものです。

会社の代表者の住所の表示が継続される

インターネットから有料で取得できる,登記情報における会社の登記の情報で,代表取締役等の会社の代表者の住所について,9/1から非表示となる予定であったようですが,法務省は,反対意見が多いことを理由に,表示を継続することにしたようです。
(東京商工リサーチ:「登記情報提供サービス、代表者住所の表示を継続へ 省令変更に「反対」多く」)

なお,DV被害者の住所非表示については,予定通り9/1に開始されるようです。