相続した空き家の売却特例の可否

空き家特例の概要

相続した空き家を売却する際に適用できる「空き家特例」は,父または母が居住していた土地・建物を売却した場合に,所得税の譲渡所得について特別控除が認められる制度です。
(国税庁「相続した空き家を売却した場合の特例 チェックシート」)

空き家増加と特例の注目

空き家が増加傾向にあるようで,将来の売却を見据えて空き家特例の適用を前提とした名義変更を相談される方も増えてきています。
(参考:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)

注意点

特例の可否判定を十分に検討せずに名義変更をしてしまうと,後から修正することが困難な場合が多いです。
特に「更正登記や再遺産分割協議で是正できないか」との相談が寄せられますが,実際には救済されないケースが多いようです。

裁判例や実務の指摘

専門家となる税理士とよく相談の上で検討する必要があります。
更正登記や再遺産分割協議をしても特例が認められないケースが多いことが指摘されています。
(参考:税法好きAIお嬢(オタク)の実務ノート「【判例×実務】東京地裁R6.9.2判決と空き家特例——譲渡前の『抹消・再登記』で特例適用の余地」)

専門家に相談を

空き家特例を見据えて売却を予定する場合は,国税庁チェックシートで一次確認を行い,必ず税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
名義変更と売却の順番と設計が重要であり,一度進めた手続を後から更正しても救済されないことが多いため,事前の全体の設計で失敗を防ぐようにしましょう。

地価上昇とともに増える不動産税収

近年,都市部を中心とした地価の上昇が続くなか,不動産に関する税収が大きく伸びているようです。

総務省の発表によれば,令和6年度の不動産取得税は4,546億円に達し,これは実に17年ぶりの高水準となったとのこと。
加えて,固定資産税は,過去最高を更新したとのことです。
(参考 日本経済新聞社「地価上昇、潤う不動産税収」)

不動産を取得・保有・売却する過程では,それぞれ異なる税金が課されます。
取得時には不動産取得税,保有時には固定資産税,売却時には譲渡所得税などが代表例です。これらの税は,不動産取引をする方にとって,避けて通れないコストです。

なかでも,相続や住宅ローンの負担が問題となる今,地価上昇に伴って課税評価額も上昇し,税負担が重くなる傾向が見られます。
こうした背景から,不動産にかかる税制を見直すべきだという議論も徐々に高まりを見せているのが,日本経済新聞社の分析のようです。

これからは,税制の動向や評価基準の変化にも注意を払いながら,不動産の取得・保有に関する判断を行うことが重要になるとかと思われます。

【令和7年度 路線価】全国平均2.7%上昇,長野県も0.6%上昇―4年連続の上昇傾向

国税庁が発表した令和7年度年分の「路線価」は,全国平均で2.7%の上昇となり,4年連続のプラスとなりました。観光需要の回復や都市部の再開発が影響しており,地価の上昇傾向が続いています。

長野県でも0.6%の上昇が見られ,昨年に続いてプラスとなりました。特に観光地や交通利便性の高い地域では,上昇傾向とのことです。
(参考:ビジネスジャーナル【路線価4年連続上昇=平均2.7%、インバウンド影響―下落県も減少・国税庁】)

路線価とは?

まず,簡単に「路線価」とは何かをおさらいしておきます。

路線価は,相続税や贈与税の算定基準となる土地の評価額のひとつで,主要道路に面した土地1㎡あたりの価格として,毎年7月に国税庁が発表しています。実勢価格(実際の取引価格)とは多少の乖離があり,納税実務や不動産評価に大きな影響を与えます。

なお,路線価の上昇は相続税や贈与税の評価額にも影響するため,土地を所有されている方は今後の資産対策を検討されることをおすすめします。

相続税調査にAI導入・申告後も“AIの目”に要注意

令和7年(2025年)7月から,いよいよ相続税調査にAIが本格導入される予定です。
これまで人の目と経験に頼っていた税務調査が,データ分析に基づくスコア評価に移行しつつあります。


国税庁,AIで相続税の申告内容をスコア化

国税庁は,相続税の申告データを集約し,申告内容に基づいて「税務リスクスコア」を算出,このスコアをもとに税務署が実地調査を行うかを判断する仕組みに移行するとのことです。
(参考 THE GOLD ONLINE『2025年7月からAIによる相続税調査がスタート!相続税“調査率5%”の裏で迫るAIの目。「申告したら終わり」では済まされない新たな調査体制とは【国際税理士が解説】』)
(参考 日本経済新聞社「相続税もAIが調査へ 国税、申告漏れスコア化で狙い絞る」)

団塊世代の高齢化で相続件数が急増へ

今年度には団塊世代が75歳以上となり,今後相続件数が急増することが見込まれています。
従来の調査体制では対応が難しくなるため,調査効率の向上を目的にAIの導入が進められているという背景があります。


実際の相続税調査の割合は?

令和5事務年度における相続税の課税割合は9.9%ですが,そのうちの調査実績は以下のとおりです:

・簡易な接触:約12.0%
(=簡易な接触件数/申告書の提出に係る被相続人数)

・実地調査:約5.5%
(=実地調査件数/申告書提出人数)

(参考 国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」「令和5年分相続税の申告事績の概要」)

「申告すれば安心」ではない時代に

今後は,たとえ申告をしたとしても,AIの目によってリスクが高いと判断されれば,調査の対象になるという時代になってきます。


早めの対策と専門家相談を

今後,AIによる調査体制が本格化する中では,「とりあえず申告しておけば大丈夫」とは言い切れなくなります。
税理士などの専門家と連携し,正確な評価と適切な資料整理を心がけましょう。

相続税の申告忘れや軽視は,後のトラブルや追徴課税につながる可能性もありますので,くれぐれもご注意ください。

令和7年度より「所得税の基礎控除」等が見直し

令和7年度(2025年度)の税制改正により、所得税の控除制度に複数の変更が加わる予定です。

この見直しは,実務的には令和7年の年末調整から影響が出るため,早めに情報を把握しておくことが重要です。


主な改正ポイント(予定)

1. 基礎控除の見直し

所得金額に応じた基礎控除額が引き上げられます。これにより、多くの納税者がより大きな控除を受けられる可能性があります。

2. 給与所得控除の見直し

現行の給与所得控除の最低保障額が増額されます。

会社員など給与所得者にとって,実質的な減税効果が期待されます。

3. 特定親族扶養控除の創設

新たに創設される控除制度で,

19歳以上23歳未満の親族(所得58万円超123万円以下)について,最大63万円の控除が認められます。

4. 扶養親族等の所得要件の見直し

扶養控除を受けるための扶養親族の所得要件が緩和されます。


実務対応はいつから?

これらの改正は,令和7年分の所得に対する年末調整から適用されます。

したがって,給与計算や年末調整を担当する経理担当者の方は,事前の準備が必須となります。

参考リンク

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

税理士法人 山田&パートナーズ:解説ページ


まとめ

今回の改正は,一見すると納税者に有利な内容も多く含まれていますが,控除額や要件が細かく分かれており,実務上の誤りにも注意が必要です。

必要に応じて税理士等の専門家への相談も視野に入れておくと安心です。

孫への授業料孫の学費を払ったら贈与税がかかる?―非課税にするためのポイント孫への授業料

祖父母が孫の大学の入学金や学費を代わりに払った場合,「贈与税がかかるのでは?」と心配される方も多いのではないでしょうか。

実は,払う「タイミング」や「方法」次第で贈与税がかかる場合とかからない場合があります
今回はその違いについて解説します。

(参考:産経新聞「孫の大学の入学金や学費をおじいちゃんが払っても贈与ではありません」)


贈与税がかからないための条件

以下の条件を満たす場合には、孫の教育費の負担に贈与税はかかりません
(※相続税法基本通達21条の3-4,5):

1.「扶養義務者」からの支払いであること

→ 扶養義務者とは,直系の血族(親や祖父母など)が該当します。
(相続税法第1条の2)

2.支払う目的が「生活費または教育費」に限られていること

→ 教育費には,学費,教材費,文具費などが含まれます。

3.支払は「都度・直接」必要な費用に充てられていること

一方,「預金や株,不動産の購入に使う」などは贈与とみなされる可能性が高くなります。


贈与とみなされるケースに注意

たとえば以下のようなケースでは、贈与税の課税対象となる可能性があります。

  • 学費名目であっても,事前にまとまった金額を渡しただけ
  • 渡したお金を孫が教育費以外に使ってしまった
  • 預金してしまった,使わずに残ってしまった

不安な場合は専門家へ

贈与税や相続税の判断は細かい条件や状況によって左右されます
少しでも不安がある場合には,税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

上場株式の評価と“通達6項”の影響

不動産や非上場株式など,評価の難しい遺産には,一定の評価基準が定められています。


🔹評価の基本ルール


🔹通達6項とは?

国税には「財産評価基本通達 総則6項」という特例があり,
通常の評価が困難な場合,国税庁長官の指示で別の評価が可能とされています。


🔹実際の適用事例


🔹今後の見通し

このような判例の続出により,通達の見直しが検討されている可能性もあるとのこと。
評価方法によって相続税額が大きく変わるため,慎重な対応が必要になりそうです。


気になる方は,税理士等の専門家への早めの相談をおすすめします。

不動産取引や工事契約での印紙税の取扱

以下の記事に印紙税に関する実務上のまとめがありましたので,参考までにご紹介します。
(THE GOLD ONLINE「不動産取引で収入印紙が必要になる文書」)


● 印紙税が必要になる主な文書

以下のような文書については,印紙税法により収入印紙の貼付が必要になる場合があります。

1.不動産売買契約書,金銭消費貸借契約書,領収書等

(印紙税法第2条,別表第1-6項 第1号文書、第17号文書)

不動産売買にかかる契約書,金銭消費貸借契約書(例:住宅ローン契約書),および領収書には,収入印紙が必要なケースが多く見られます。

2.工事契約書,注文書,注文請書

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

建設工事等に関する契約書や注文に伴う書類も,印紙税の対象となります。

3.不動産管理委託契約に関する契約書等

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

不動産の管理委託に関する契約書も,「請負に関する契約書」として印紙税の対象になる場合があります。


●領収書の取扱について

不動産取引における領収書については,発行者が誰であるかにより、収入印紙が必要かどうかが異なります。

  • 個人が私的に発行する場合:
     → 通常、収入印紙の貼付は不要(営業に関しない受取書)
  • 法人や不動産賃貸業を行っている個人が発行する場合:
     → 収入印紙の貼付が必要になる場合が多いです

(出典:国税庁「営業に関しない受取書」)


● 印紙税の軽減措置がある文書

以下の契約書については,印紙税の軽減措置が講じられています。

  • 工事請負契約書
  • 不動産売買契約書

(出典:租税特別措置法 第91条)


●電子契約にすることで印紙税が不要に

契約書や受領書を電子化することにより,印紙税の課税対象外となります。

  • メール添付のPDF契約書
  • クラウドサインなどの電子契約サービスを使用した場合

これらは「紙の文書」に該当しないため,印紙税は課税されません

(出典:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱」)


⚠ 現状の課題:電子契約に対応していない事業者が多い

理論上は電子契約で印紙税を回避できますが,現時点では電子契約を導入している会社や業者はまだ少数です。相手方の合意やシステム導入も必要になるため,導入には一定の準備が必要です。


● まとめ

  • 不動産売買や工事契約などでは,収入印紙が必要な文書が多く存在する。
  • 契約書の電子化によって印紙税を回避することが可能
  • ただし,実務上はまだ電子契約に対応していない事業者も多い。

また,企業が対外的に出す文書には,印紙税のかかるものも多々あります。
特に法務部門では,対応のために印紙税に関する参考書を1部以上常備し,必要な場面で迅速に確認・対応できる体制を整えることをおすすめします。

文書作成時には印紙税の要否を事前に確認し,可能であれば電子契約化によるコスト削減も検討してみてください。

農地の評価の過大算出

国税庁にとっては,痛い出来事なんでしょうか。

相続税と贈与税の歳出の基準となる課税の評価額は,農地ついては,純農地,中間農地,市街化周辺農地,市街化農地と区分に分かれており,算定方法が各区分で異なります。
(参考 国税庁「No.4623 農地の評価」)

市街化農地の区分の場合には,宅地の路線価等の額に「宅地造成費」を控除した額が評価額になります。この宅地造成費の算定が一部で間違っていたようです。(日経新聞「農地の相続・贈与税、過大算出か 関東信越・大阪国税など」)

関東信越国税局と大阪国税局(本年度分),高松国税局(令和元年度分)の3局管内の一部地域で誤りがあったとのこと。対象の地域の農地で申告された分については,局から連絡が行くそうです。

外部の指摘で分かったようですが,相続税の計算はとても複雑そうなので,なかなか見つけづらいものなのでしょうが,過大に算出されていたというニュースは,びっくりする内容でした。

令和6年度路線価の公表

令和6年分の財産評価基準(路線価)が公表されました。
場所「国税庁:令和6年分財産評価基準を見る

土地の価格には,
・路線価 (今回の価格)
・固定資産評価額 (参考:総務省「固定資産税の概要」)
・公示価格 (参考:国土交通省「地価公示」)
・実勢価格 (査定の依頼など,例 国土交通省 「不動産情報ライブラリ」)
の4つの価格があります。(一物四価)

今回の路線価の主な使い道は,相続税と贈与税の算定です。
(国税庁「No.4602 土地家屋の評価」)

前年度分(令和5年度分)も閲覧できるため,ご自身のお持ちの土地を前年度と比較してみるのもいいのではないでしょうか。