遺産分割によらない共有不動産の怖さ

遺産分割協議と相続登記を早めに実施しなければ,争っている相続人から困難(嫌がらせの方法)を与えられることになりかねません。

法定相続人が複数いる場合に,管理を容易にするため,1件の不動産は所有者を1名にする等,なるべく少ない所有者(共有者)となる遺産分割協議をしたほうがよいとされています。
(参考 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」30頁 見直しの契機としての所有者不明土地問題)

ところが相続登記をしていない場合に,その不動産の持分を買い取る業者も一定数存在しています。買取業者は,一部の相続人が持分を他の相続人との協議なしに転売して利益を得たいというニーズを利用し,法定相続分の買取りを行うのです。結果,転売された持分は,他の相続人では戻せなくなってしまいます。また,持分の買取業者が以下のことを行う可能性が高いです。

 ・実際利用している相続人や相続権のない利用者に「家賃の請求」
  (例 民法第249条第2項 共有者の使用対価)
 ・管理権を行使し,他の相続人へ「管理費用の請求」
  (民法第253条第1項)
 ・共有物分割を請求し,「代償分割費用の請求」,他の不動産を「現物分割の請求」 
  (民法第256条第1項)
 ・管理費用に基づく償金に代わる「持分の引渡し請求」 
  (民法第253条第2項)

共有不動産の買取業者が関わってくると非常に厄介となりますので,早めの「遺産分割協議」と「相続登記」,相続人間で強い争いがあらかじめ予想される場合には,「遺言書の作成」を強くおすすめいたします。
 

住所が移せない場合でも「入居見込み確認書」で,住宅用家屋証明が対応できる

市区町村役場が発行する住宅用家屋証明書(所有権保存登記や抵当権設定登記の登録免許税を低減するために必要な証明書)を取得する際には,通常,あらかじめ,個人の居住の用に供したことを証明するため,その家屋に住所を移転しておく必要があります。
(租税特別措置法第72条の2,同施行令第41条等)

住宅用家屋証明書があれば,登記の手数料となる登録免許税が保存登記で0.4%が0.15%となり,かなりの登記費用の低減となります。住宅用家屋証明書の確実な取得が必須となるため,建物の完成後,住所を移してから登記する順番となるため,登記の申請をする際,かなり忙しい状況で住宅用家屋証明書を取得しなければなりません。

本年7月から住宅用家屋証明書の取得の際,市区町村への住民票の写しの提出がなくとも,「入居見込み確認書」の提出で対応できるようになったようです。
(国土交通省「住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置」の証明書の様式等 参照)

上記の確認書は宅建業者の証明となりますので,今後,家屋の買主様と連携を密にしてその確認をしていただくことになっていきそうです。