相続登記の義務化になったからこその生前対策

土地や建物などの不動産の相続登記が義務化となり,相続人の誰か(または誰から複数人)がその不動産を受け継ぐことが比較的明確になるようになりました。

不動産にある程度の価値があれば,利用できたり,資産として持っていて安心といったこともあるのかもしれませんが,地方の場合には不動産に価値がない場合も少なくなく,相続しても負担の増すだけということもあります。

実際価値の少ない不動産を相続してしまった場合の,相続対策はあまり選択の余地がなく,泣く泣く固定資産税を払ったり,多額の管理費用を負担する場合も少なくありません。そこで,生きているうちにできることをするという,いわゆる「生前対策」を検討していくのもひとつの選択肢となります。

そこで,生前対策を負担の少ない順番で列挙してみます。

負 ・現在の登記の調査,地図の調査
担 ・エンディングノート作成
↓↓ ・遺言書作成
  ・賃貸借契約
  ・休眠担保の解除・抹消
  ・境界確定,分合筆,地目変更
  ・家族間の贈与,他人間の贈与,共有物分割
  ・家族信託,その他の信託
  ・売却や処分
  ・アパート建築等による税対策
  ・不動産管理会社の設立,不動産財産の法人化

今までのご依頼いただいた相続人様におかれましても,被相続人様が生前対策を全くされていない場合も少なくありません。相続登記義務化になるまでは,多少相続後の負担が見込まれる場合でも,見て見ぬふりができました。今後は,できる範囲で生前対策をされてみるのも検討してみてください。

相続放棄の申述件数が毎年増加

最高裁判所発表の相続放棄の申述受理件数が令和5年度で,282,758件で,令和4年度と比較して,22,288件増になったようです。
(最高裁判所事務総局「令和5年 司法統計年報 3家事編」6頁)

相続放棄の理由としては,昔から負債総額が大きいときに選択されることが多いのですが,そのほかに,いわゆる「負の不動産」といわれる,処分や維持の難しい不動産から逃れようとしている場合も多いです。
(参考:FNN「【実家の相続を放棄したい理由ランキング】経験者201人アンケート調査」)

相続放棄の申述は,申立の可能期間が3か月以内となっているため,早めに結論を出して,早めに司法書士や弁護士にご依頼ください。