自筆証書遺言の原稿用紙の公開について

本日は,当事務所(山下司法書士事務所)で使用している「自筆証書遺言書」の原稿用紙を公開いたします。

自筆証書遺言原稿(PDF)


自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言書は,公正証書遺言書と比較して,手軽に作成できるという大きな利点があります。費用や作成にかかる期間も抑えられ,自身のタイミングでいつでも撤回・修正できるという柔軟性も魅力です。

一方で,

  • 記載方法に誤りがあると無効になる可能性がある
  • 偽造・改ざんのリスクがある

という点には注意が必要です。


作成方法の一例

遺言書を自筆で作成される場合,この原稿用紙を印刷してご利用いただき,全文・日付・氏名を自筆で記載し,押印することで,形式上の要件は満たすことができます。

さらに,下記のように,封筒に「遺言書」などと明記し,検認の注意書きと日付・氏名を書いて封印しておくことで,秘密性もある程度確保され,トラブルのリスクも軽減されます。

また,封筒に署名をせずに,証人とともに公証人役場で手続きをすれば,「秘密証書遺言書」として正式に取り扱われることも可能です。こちらは内容を他人に知られたくない場合に有効です。


内容の参考:長野地方法務局「エンディングノート」

遺言書の具体的な内容について悩まれる方は,長野地方法務局が作成した「エンディングノート」を参考にされると良いでしょう。

長野地方法務局「エンディングノート」


専門的な内容が必要な場合は

財産の分け方が複雑な場合や,相続人間でのトラブルが予想される場合には,専門家への相談をおすすめします

当事務所はもちろん,全国の司法書士事務所・弁護士事務所でも,内容確認やアドバイスを行っていますので,お気軽にお問い合わせください。

再婚と遺産トラブルを回避した遺言書

再婚された方の相続に関するトラブルは,実は意外と多く見られます。特に,前婚の親族と後婚の親族の間で,遺産分割をめぐる意見の対立が起きやすいです。

ある記事では,このような事例が紹介されていました。(参考:朝日新聞『熟年再婚で義理親子の「争続」が勃発 遺言トラブルで検認が増加』)

前婚の子と,後婚の配偶者の親族との間で遺産をめぐる対立が起こりそうになったが,被相続人が生前に作成していた遺言書によって,スムーズに解決された。

このような対立は決して珍しくありません。たとえば次のような具体的なケースがあります。

  • 前婚の子の住家となっていた不動産が,後婚の妻に相続されそうになったため,住み続けられなくなるおそれが出た
  • 後婚の妻が,日常の生活費として確保していた貯蓄を,前婚の子から遺産分割の対象として要求された

遺言書は,相続人間のトラブル防止に極めて有効な手段です。

実際に,司法統計でも遺言書の検認の件数はここ数年増加傾向にあります。これは,遺言書が今後の相続対策として注目されている証拠とも言えるでしょう。

相続対策としてのポイント

  • 再婚など家族関係が複雑な場合は,生前からの対策の検討が必要
  • 遺言書の作成により,自身の意思を明確にでき,後の親族を守ることができる
  • 遺言執行者の指定や公正証書遺言にすることで,執行力(遺言を有効にする力)を高められる

再婚に限らず,親族関係において少しでも「気がかり」な点がある場合には,遺言書の検討をおすすめします。

国庫に入る遺産が過去最高1,000億円超

令和5年度に相続人がいない遺産が国庫に帰属した総額が1,015億円に達したとのことです。
(日経新聞社【国庫に入る「相続人なき遺産」、初の1000億円超 23年度】)

遺産が国庫に入るというのは,子や孫,兄弟姉妹がいない方が遺言書を作成していなかったために発生したケースや,相続人全員から相続放棄した場合に発生します。
この場合には,相続財産清算人が選任され,債務や税金の支払いを終えた後,行き先のない財産が国庫に帰属するという流れになります。

◆遺言書の重要性
1,000億円を超える財産が国に帰属したということは,それだけの資産が遺言書で 特定の人や団体に遺贈される機会を失ったともいえます。

もし,身近に相続人がいなくても,
親しい友人や知人にのこす
お世話になった団体へ寄付する(公益法人・NPOなど)
地域貢献のために自治体や地域団体に寄付する
といった形で,遺産を生かす方法は多くあります。

特に,近年では 「遺贈寄付」 への関心も高まっており,遺言書を活用して社会貢献を行う ことも可能です。

「自分には相続人がいないから…」とあきらめず,自分の財産をどう活用するかを共に考え,遺言書を作成することが重要かと思います。