会計限定の監査役に対する責任の重い判例

まさか,会計限定の監査役についても,重い責任が課せられているとは思いもしませんでした。

今日は,「会計限定」監査役にも,計算書類等に重い責任があることについて,はなしをします。

株式会社の監査役には,業務監査権のある監査役と監査権限が会計に限定された「会計限定監査役」があります。

一般に「会計限定監査役」の設置は,非公開会社であり,小規模な株式会社(会計監査人設置会社でない株式会社)でなければなりません。(会社法389条1項)

この「会計限定監査役」は,業務監査権のある監査役に比べ,当然に責任の度合いが小さいですし,「会計限定監査役」を置いている会社は,厳密には「監査役設置会社」ではありません。(会社法2条9号)

しかしながら,「会計限定監査役」の置いた株式会社でも,従業員の横領事件について,計算書類等のみを監査し,残高証明書の原本を確認せず,横領事件が見抜けなかった事件について,最高裁判所は,

会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。

と会計帳簿の内容があっていても,任務を尽くしていないとしました。

今後「裏付けを尽くした監査が一層求められる」(日経新聞:「監査役の任務、帳簿の裏付け確認必要な場合も 最高裁」中の「明治大の弥永真生専任教授(会社法)」談)と言えそうです。