自筆証書遺言書のススメ

相続トラブルを防ぐためには、遺言書を作成しておくことが有効です。
当事務所では、基本的には公正証書遺言(参考 日本公証人連合会「2遺言」)をおすすめしていますが、場合によっては、手軽に作成できる自筆証書遺言をおすすめすることもあります。

自筆証書遺言は、ご自身で全文を書く遺言書です。
公証人の手続きが不要なため、比較的早く作成でき、費用も抑えられるというメリットがあります。

一方で、亡くなった後には家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
もっとも、現在は法務局の遺言書保管制度があり、この制度を利用した場合には検認は不要になります。
(参考 法務省「自筆証書遺言書保管制度」)

では、どのような場合に自筆証書遺言をおすすめするのでしょうか。
公正証書遺言は、公証人の面前で証人を立てて作成する必要があるため、次のような場合には自筆証書遺言をおすすめすることがあります。

・公証人等、他人の面前で話すことが苦手であったり、難しい
・証人2名を用意することが難しい
・公正証書遺言の費用をかけることが難しい
・公正証書で作るほど内容が定まっておらず、変更する可能性がある

遺言書は、元気なうちに準備しておくほうが無難です。
自筆証書遺言の作成を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

不動産売却のきっかけは「相続」?--売却前に確認しておきたい相続登記のポイント

スポーツ報知の記事によると、不動産売却のきっかけの47.7%が「相続」であるというデータがあります。
(参考 スポーツ報知「不動産売却のきっかけ、最多は『相続』47.7% 売却前に知りたい情報1位は『価格相場』85.3%…株式会社NEXERと不動産のいろは屋」)

当事務所でも、相続登記のご依頼後に、その物件が売却されているケースをよくお見かけします。
相続した不動産を居住用や資産として利用しない場合、売却を検討されるのは自然なことかと思います。

相続した物件の売却を視野に入れる場合、相続登記は必ず必要となります。ただ、単に名義変更をしておけばよいというものではなく、手続きの前後でいくつか注意しておきたい点があります。そこで、知っておくべきこと、やっておくべきことをまとめてみました。

1.宅地に隣接する道路等の土地について、登記に漏れがないか確認すること
登記漏れがあると、時間が経過した後に登記を行う場合、相続人の状況が変わるなどして、手続きが複雑になることがあります。

2.相続後に地図(公図、法務局の地図)等で宅地周辺の状況を確認すること
宅地と道路との接し方などは、土地の評価や売却のしやすさに大きく影響します。

3.相続登記を速やかに行うこと
1と同じように、時間が経過すると、相続人の変動などにより手続きが複雑化しやすくなります。

4.宅地の評価額を把握しておくこと
売却を検討する場合、あらかじめ相場や評価額を把握しておくと、価格交渉がスムーズに進みやすくなります。

5.未登記の建物や増築部分があれば登記しておくこと
買主が金融機関から融資を受ける際には、建物や土地について「登記の内容と現況が一致していること」を求められます。この場合、売主側で登記を変更するよう求められるケースが多くです。これらの登記や測量は、土地家屋調査士の分野となります。

以上のとおり、相続した不動産の売却を予定している場合には、早い段階で相続登記を行い、必要な点を整理しておくことが重要です。相続登記については、専門家に早めに相談されることをおすすめします。

NISAを急ぐ前に、少し立ち止まる―円安とインフレの時代の資産防衛

マスコミではNISAの活用が盛んに取り上げられています。
あわせて、円安の進行やインフレ期待を背景に、「預金だけでは実質的に目減りするのではないか」という不安も広がっています。

もっとも、資産の基礎は預貯金で十分です。
生活費や緊急資金まで投資に回す必要はありません。

そのうえで、投資をどう位置づけるかが問題になります。


投資の動機を整理する

投資を考える背景には、

  • マスコミや政府等によるNISAの積極的な紹介
  • 円安が進行する可能性
  • 物価上昇による実質価値の目減りへの懸念

があると思います。

これらは一定の合理性があります。
ただし、「不安」だけを動機に割合を増やすのは慎重であるべきです。


NISAを使うなら割合を限定する

投資を行う場合でも、

資産全体の10〜30%程度

にとどめるのが現実的と思われます。
一般に証券会社等は、40%程度を勧めていますが、実際、邦人の投資割合は、平均で30%程度のようです。
(参考 大和証券社「投資の割合はいくらが適切?貯金とのバランスや決めるポイントをお金のプロが解説!」)

例えば、預貯金の資産3,000万円なら、300万〜900万円程度です。

株式市場は、10年に一度程度の大きな下落を経験します。
その局面でも生活が揺らがない設計が前提です。


投資先は分散型を基本にする方法も

個別銘柄への集中投資は、株式投資に慣れていない場合には、銘柄も多く選びづらいものがあります。

そこで、最近話題に上がっているものの中には、

  • 世界全体に分散するインデックス型投資信託
  • いわゆる「オルカン」型の商品
  • 低コストのETF

といった、広く分散された商品も人気があるようです。

企業一社ではなく、市場全体の成長に投資するという考え方です。


金ETF等は「保険」として位置づけるか?

円安や通貨不安への備えとして、金現物等の資源投資に関心を持つ方も増えています。
金ETFは、現物を保有せずに金価格に連動できる手段として便利です。

ただし、

  • 利息や配当は生みません
  • 価格変動は決して小さくありません
  • 実質金利の上昇局面では弱くなる傾向があります

金は「増やす資産」というよりも、「守るための保険」に近い性質です。

保有する場合も、資産全体の一部(例えば5〜10%程度)にとどめるのが穏当であるとされてます。


目的は「守りながら備える」こと

NISAは有用な制度です。
しかし「やらなければ損」というものではありません。

円安やインフレへの備えは一定程度必要ですが、それ以上に大切なのは、

  • 生活資金を確保すること
  • 下落してもあわてない割合にすること

そして何より、投資には、価格変動リスクがあり、最終的な判断と結果は自己責任を伴います。

預貯金を土台に、余裕資金の範囲で分散投資を行う。
その程度の姿勢が、現時点ではもっとも現実的だと考えます。

売れない・貸せない・担保にできない?未登記建物の重大リスク

相続登記の手続きを進める場面や、いざ土地建物を売却しようとする場面で顕在化しやすいのが、未登記建物のリスクです。

未登記といっても、いくつかの類型があります。

1.増築や一部解体をしたにもかかわらず、その変更登記をしていない場合
2.旧建物を解体したにもかかわらず滅失登記をしていない場合
3.建物を新築した際に、そもそも表題登記をしていない場合

発見のきっかけとして多いのは、都や市町村が管理する固定資産評価を確認したときです。評価の対象となっている建物と、登記簿上の建物の内容とが大きく異なっている場合があります。

固定資産評価上の床面積と登記上の床面積が異なること自体は、評価基準の違いから比較的よく見られます。しかし、固定資産評価には家屋番号が付されていない場合などは、未登記建物である可能性が高いといえます。

未登記部分が判明すると、当該部分について第三者に対抗できないという問題が生じ、次のようなリスクが現実化します。

1.そのままでは第三者に売却できない可能性がある
2.融資の際に、金融機関等から担保設定の前提として登記を求められる可能性がある
3.他の土地の共有者や賃借権者等の権利者に対し、自身の所有であることを主張できない可能性がある

未登記部分が判明し、登記を要する場合には、測量や現況確認などの手続が必要となるため、土地家屋調査士へ依頼することになります。

未登記建物のリスクは、日常生活の中では見過ごされがちですが、いざという場面で大きな支障となることがあります。ご自身の建物という大切な財産を適切に保全するためにも、一度、状況を確認されることをおすすめします。

(最近増加しているご相談に対する事例を元にしています。早めのご相談をおすすめします。)

【要警戒】NISA口座・相続と同時に非課税は消える

NISA制度は、配当税や譲渡益税の非課税を受けられることに加え、金利上昇が物価上昇に追いついていない状況等も背景に、爆発的に普及しています。昨年3月末時点で、2,646万口座に達しています。
(参考 金融庁「NISAの利用状況」)

世代別では、30代、40代の利用が多いものの、60代以上の口座数も4分の1に上っています。相続の関係する世代においても、NISAは無関係とはいえない状況です。
(参考 日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況」)

そこで気になるのが、NISA口座の相続です。主な注意点は、次のとおりです。

・亡くなった時点で非課税措置は終了する
・相続人の管理口座に移す場合、取得日と取得価格は相続の日(亡くなった日)の時価が基準となる
・相続人のNISA口座には移管できない
(参考 大和証券「生涯非課税だからこそ気になる!?新NISAの相続」)

「生涯非課税」という表現から、死亡後も非課税が続くと誤解されることがありますが、非課税措置はあくまで口座名義人が存命中であることが前提あり、また、相続手続きが完了するまでは、証券会社上は被相続人のNISA口座として管理されます。しかし、税務上は死亡日に非課税措置が終了しています。

そのため、死亡日以後に生じた配当等については課税対象となり、手続きが遅れた場合には、配当税等の追納が生じる可能性すらあります。

NISA口座は税制上のメリットが大きい一方で、相続時には独特の取扱いがあります。相続が発生した場合には、預貯金や不動産と同様に、証券口座の有無を早期に確認し、速やかに解約や移管の手続きを進めましょう。

名義預金は通用しない・・国税庁が示した最新事例

例年どおり,前年度分の相続税に関する税務調査の状況について,国税庁から公表がありました。
(国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」)

本資料では,主に次の点がまとめられています。

・相続税の実地調査の状況
・相続税の簡易な接触の状況
・相続税の無申告事案に対する実地調査の状況
・相続税の海外資産関連事案に対する実地調査の状況
・贈与税の実地調査の状況

詳細な分析は税理士の先生方にお任せするとして,国税庁のアナウンスを要約すると,おおむね次のとおりです。

相続税については,実地調査が増え,その結果として追徴税額も増加している
 → 調査件数・指摘額ともに,調査が強化されているように感じられる

「簡易な接触」は,件数・指摘内容ともに過去最高水準
 →当局からの電話等による軽度な接触であっても,申告漏れの把握が大きく進んでいる

無申告事案に対する調査では,追徴税額が過去最高
 → 申告していないケースに対する当局の対応が,より厳格になっている

海外資産に関する申告漏れは,件数・金額ともに増加
 → 海外資産についても把握・追及が進んでいることが明確

贈与税は,調査件数自体は減少しているが,追徴税額は増加 

また,本資料には「相続税調査事例」も掲載されています。
特に興味深いのは,事例②の「名義預金」に関するケースです。

被相続人名義の預金口座から,相続人やその家族名義の預金口座へ多額の資金移動が行われており,これについて国税当局は,相続税の納税を免れる目的で,被相続人の財産が相続税の基礎控除以下となるよう,意図的に預金移動が行われたものと認定したようです。

名義預金については,問題となりやすい論点ですが,あらためて十分な注意が必要であることを示す事例といえるかと思われます。

金・プラチナ・銀の現物・先物の価格上場

投資は自己責任の原則が前提となりますが,今後の見通しは不透明である一方,金,プラチナ,銀などの現物や先物取引の価格が,ここにきて著しく上昇しています。

中でも銀の価格上昇は顕著で,昨年9月までは1toz(トロイオンス)あたり40ドル前半で推移していたものが,現在(1/27)では100ドルを超えています。
(参考 「yahoo!finace Silver」)

日本円ベースで見ても,銀の価格は昨年9月には1gあたり225円程度であったものが,現在(1/27)には1g590円程度まで上昇しています。
(参考 「三菱マテリアル社 銀価格チャートライブラリー」)

この背景について,ブルームバーグは「米国,フランス,日本を含む主要経済国の通貨が今年弱体化し,投資家がビットコインや金属へと資金を移動させている」との見方を示しています。
(参考 Forbes JAPAN「上昇を続ける銅、金、銀価格 その背景にある要因」)

安全資産として,金や銀などの現物資産が有効と考えられている側面はあるものの,政治的背景による円安やドル安も影響しているようです。
過度な通貨安による不安が,少しでも払拭されることを願いたいところです。

メモリーの高騰

パソコンやサーバー向けのメモリー価格が,昨年後半以降,急激に高騰しているようです。

参考として,メモリーメーカーであるCrucial製の32GBメモリーを2枚(計64GB)使用した製品について,価格ドットコムの推移を見てみました。
昨年7月頃までは,おおむね2万円から2万5,000円程度で購入できていたものが,現在では7万5,000円前後となっており,価格は約3倍にまで上昇しています。
(参考 価格.com「CT2K32G4DFD832A [DDR4 PC4-25600 32GB 2枚組] の価格推移グラフ」)

近年,パソコン本体の価格上昇自体は見られるものの,3年ほど前から,グラフィックボードを除けば,CPUやストレージ,メモリーといった主要デバイスの性能には,大きな進化が見られません。
それにもかかわらず,価格だけが急激に伸びている印象があり,特にメモリー価格の上昇は顕著です。

このメモリー価格高騰の要因としては,円安傾向の影響も指摘されていますが,主な原因は,生成AIサービスの拡大に伴う,データセンターの新規稼働増加にあるとされています。
(参考 Gigazine「DRAM価格の高騰について業界各社は「AI需要が原因」と説明しているが実質的な価格操作が行われているとの見方も」)
(参考 ニュースウィッチ『AI向けシフト、不足深刻化…「半導体メモリー」の価格上昇が止まらない』)

事業用として使用するパソコンは,税法上は固定資産に該当する場合があるものの,実務上は消耗品に近い扱いをせざるを得ません。定期的に買い替えなければ,経年劣化による故障が増え,業務の円滑な遂行に支障を来すおそれがあるためです。

適正な価格でパソコンが安定的に流通する環境を維持するためにも,メモリーを含む各種デバイスの価格が,早期に落ち着くことを願うばかりです。

世間で騒がれている個人事業主の社会保険加入サービス

・会社員と個人経営者の健康保険と年金の違い

個人経営者や家族経営の場合,経営を法人化していないケースも多く見られます。法人化した場合と,しない場合の社会保険については,おおむね以下のように整理できます。

健康保険年金
会社員・法人役員
(法人化した場合)
全国健康保険協会や業界の健康保険組合の健康保険厚生年金
個人経営者
上記社会保険の無加入者
(法人化しない場合)
(都道府県の)
国民健康保険
国民年金

・会社員の健康保険と年金

会社員等の場合,健康保険料や年金保険料は,給与や報酬を基準として計算され,給与から天引き(源泉)される形で徴収されます。そのため,いくら支払っているのかを個々人が強く意識することは少なく,法人側が徴収し,健康保険組合や厚生労働省に納付する仕組みとなっています。

健康保険料や厚生年金保険料の額は,過去の給与等をもとに標準報酬月額を定め,通常は法人と会社員等がそれぞれ半分ずつ負担します。

・個人経営者の健康保険の負担が大きい?

個人経営者等の場合,健康保険については,前年度の収入や支出をもとに国民健康保険料が確定され,年金については,1人あたりほぼ固定額の国民年金保険料を支払うことになります。

国民健康保険料は,全額を自身で負担し,かつ前年の所得により金額が決まるため,現在の収入や資産状況と必ずしも一致しないことがあります。この点が,国民健康保険料に対する負担感を高めている一因といえます。

さらに,会社員等の健康保険料や厚生年金は,扶養家族が増えても保険料が直接増加しないのに対し,個人経営者等の国民健康保険料や国民年金は,世帯単位・人数単位で請求されるのが通常です。
そのため,家族が多い場合には,負担感がより大きくなります。

・マイクロ法人を設立で税金の節約と保険料抑制

こうした健康保険料や年金保険料を抑える方法として,いわゆる「マイクロ法人」を設立し,個人経営者がその法人の役員や従業員となることで,社会保険料を抑えるスキームが知られています。

このスキームは,まず所得税から法人税・事業税へ切り替えることで税負担が軽減されるかを検討するところから始まります。ただし,すべての個人経営者にとって有効とは限りません。法人の設立には一定の費用がかかり,設立後も個人と法人の双方について申告が必要となります。

また,法人には,利益がなくても課税される地方事業税の標準課税があり,この負担は法人を解散・清算結了するまで継続します。そのため,法人の維持費用が,個人事業の場合よりも大きな負担となることがあります。
将来的に収入が少なくなる,あるいは休眠状態が予想される場合に,法人を設立・維持する判断は,慎重であるべきと考えます。

・脱法的なスキームか?

こうした法人設立のリスクを避ける方法として,他人が設立した「社会保険料削減のみを目的とする法人」の役員に就任するスキームも存在します。

この方法では,個人事業主として多額の収入があっても,役員報酬を少額に設定することで,その金額を基準とした標準報酬月額により,ほぼ最低額の健康保険料・厚生年金保険料のみを支払います。その結果,国民健康保険料や国民年金保険料の支払いを免れることになります。

しかし,このスキームはいわゆる「脱法的」なものであり,実質的な収入があるにもかかわらず,自治体の国民健康保険財政を圧迫し,また会社員等が支えている健康保険や厚生年金制度を,最低限の負担で利用するものです。
国民健康保険・国民年金制度の根幹を揺るがしかねないだけでなく,健康保険組合や厚生年金制度全体にも悪影響を及ぼすおそれがあります。

さらに,利用される法人の多くは一般社団法人や合同会社であり,役員として登記されることで,利用者の氏名が公的に特定されるというリスクも伴います。
社会保障制度の観点からも,社会的な評価の面からも,このスキームの利用はおすすめできません。

・最後に

税と同様に,社会保険料についても,収入に応じた適正な負担が求められるところです。
今後,社会保険料負担の不均衡に対してどのような制度的対応がなされるかは不透明ですが,収入に見合い,かつ負担感の公平な制度へと改善されていくことを願うばかりです。

令和8年の始まり

あけましておめでとうございます。
本年も当事務所をよろしくお願いいたします。

本年4月より,住所変更の義務化を伴う不動産登記法令が施行されます。
(参考:法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」)

これにより,不動産登記は,従来以上に財産の保全という観点から重要性を増すものと考えられます。
住所変更登記をはじめ,相続登記など不動産に関する各種手続についても,お困りのことがありましたら,お気軽にご相談ください。