認知症になってからでは遅い?財産管理にも大きな制約が

「まだ元気だから相続対策は必要ない」と考えている方は少なくありません。

しかし、認知症などで判断能力が低下すると、相続対策だけでなく、財産管理にも大きな制約が生じます。

認知症になると難しくなること

  • 遺言書の作成
  • 生前贈与
  • 不動産の売却
  • 家族信託の設定
  • 相続税対策を目的とした財産の組み替え

成年後見制度について

認知症になった場合、成年後見制度の利用(参考 厚生労働省「成年後見制度」)を検討することがあります。

成年後見制度は、本人の財産を守るための重要な制度ですが、相続対策や節税を目的とした制度ではありません。そのため、後見開始後は本人の利益を最優先に財産を管理する必要があり、不動産の売却や生前贈与などには大きな制約が生じます。

また、一度開始すると原則として本人が亡くなるまで継続するため、「とりあえず成年後見を申し立てればよい」と簡単に勧められる制度ではありません。

よくあるケース

例えば、親が認知症となって施設へ入所し、不動産を売却して施設費用に充てたいと考えても、家族だけで売却することはできません。

「元気なうちに準備しておけばよかった」と後悔されるケースは少なくありません。

先にする選択肢は?

相続対策は、判断能力が十分にあるうちだからこそ選択肢があります。

将来に備えるためにも、早めに遺言書の作成や財産の整理などを検討することをお勧めします。

破産者マップが何回も復活

ここ数週間、いわゆる「破産者マップ」が再び復活と閉鎖を繰り返しているようです。

確認されているものでは、2009年から今年度までの破産開始決定情報について、氏名、住所及び破産開始決定日が地図アプリ上で閲覧できる状態となっていました。また、直近の破産開始決定情報まで反映されているものも見受けられます。

さらに、掲載情報の削除と引き換えに、数万円相当のステーブルコインによる支払いを求めるようです。

このようなサイトに関しては、次の点に注意してください。

・サイトのURLやアクセス方法を拡散しないこと
・削除のための金銭要求には応じないこと(削除される保証がなく、別サイトで再掲載されるおそれもあります)
・仕組みが分かったとしても、同様のサービスを模倣しないこと

また、法的な観点からは、破産者マップのようなサイトによる破産者情報の公開について、個人情報保護委員会は個人情報保護法違反に当たるとして行政上の対応を行っています。

そのため、興味本位であっても情報の拡散や再利用に加担しないことが重要です。

参考:
個人情報保護委員会「破産者等の個人情報を違法に取り扱っている事業者に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和4年7月20日)」

未登記建物の問題点と留意点

不動産実務において、「未登記建物」は決してめずらしいものではありません。日常業務の中でも、一定数存在していると感じます。

未登記建物の主な類型

未登記建物といっても、その内容は一様ではなく、例えば次のようなものがあります。

・建物全体が登記されていない完全な未登記
・増築部分のみ未登記
・一部解体後の変更が未登記
・附属建物の新築・解体が未登記

未登記に気づく端緒

次のような事情から未登記が判明することがあります。

・固定資産評価と登記内容が一致しない
・建物の棟数が異なる
・著しく古い建物(例:草葺等)が登記上残っている

未登記建物のリスク

未登記建物は、実務上いくつかの不都合を生じさせます。

・融資時に表題登記の修正を求められる
・課税対象となっていない場合、所有関係の立証が困難になる
・土地・建物の売買や信託や贈与等の際、登記と現況の不一致により取引の支障となる
・現地を知らない第三者にとって、登記以外に現況把握の手段が乏しい

義務か否か

本来、未登記建物の表題登記や変更登記は義務とされており(例 不動産登記法第47条から第52条など)、未登記建物は可能な限り解消しておくことが望ましいといえます。
もっとも、実務上は相当数存在しており、早期の確認と対応が重要です。

抵当権抹消登記のタイミングと注意点

4月から5月にかけては、3月に完済した住宅ローンに関する抵当権抹消のご依頼が多い時期です。

早めにご依頼いただける場合には問題が生じることは少ないのですが、時間をおいてからいざ抹消登記を行おうとすると、いくつかの障害が生じることがあります。

たとえば、以下のようなケースです。

・金融機関の合併等により、合併の登記が必要となり、費用が増加する
・金融機関の本店所在地や代表者の変更により、調査や添付書類が追加で必要となる
・不動産の所有者の住所変更により、住所変更登記を先行して行う必要が生じ、費用が増加する
・不動産の所有者に相続が発生し、相続登記が必要となる
・抵当権が長期間放置され、金融機関が解散している場合、いわゆる休眠担保の抹消や裁判手続が必要となり、費用が高額となる傾向がある
(参考 公益社団法人全日本不動産協会・出展 弁護士渡辺晋先生の記事「休眠担保権の抹消」)

いずれにしても、登記は放置することで後に手続が複雑化し、不利益が生じる可能性が高くなります。

そのため、住宅ローン完済後は、できるだけ早期に手続を行うとともに、司法書士へご相談いただくことをおすすめいたします。

売れない・貸せない・担保にできない?未登記建物の重大リスク

相続登記の手続きを進める場面や、いざ土地建物を売却しようとする場面で顕在化しやすいのが、未登記建物のリスクです。

未登記といっても、いくつかの類型があります。

1.増築や一部解体をしたにもかかわらず、その変更登記をしていない場合
2.旧建物を解体したにもかかわらず滅失登記をしていない場合
3.建物を新築した際に、そもそも表題登記をしていない場合

発見のきっかけとして多いのは、都や市町村が管理する固定資産評価を確認したときです。評価の対象となっている建物と、登記簿上の建物の内容とが大きく異なっている場合があります。

固定資産評価上の床面積と登記上の床面積が異なること自体は、評価基準の違いから比較的よく見られます。しかし、固定資産評価には家屋番号が付されていない場合などは、未登記建物である可能性が高いといえます。

未登記部分が判明すると、当該部分について第三者に対抗できないという問題が生じ、次のようなリスクが現実化します。

1.そのままでは第三者に売却できない可能性がある
2.融資の際に、金融機関等から担保設定の前提として登記を求められる可能性がある
3.他の土地の共有者や賃借権者等の権利者に対し、自身の所有であることを主張できない可能性がある

未登記部分が判明し、登記を要する場合には、測量や現況確認などの手続が必要となるため、土地家屋調査士へ依頼することになります。

未登記建物のリスクは、日常生活の中では見過ごされがちですが、いざという場面で大きな支障となることがあります。ご自身の建物という大切な財産を適切に保全するためにも、一度、状況を確認されることをおすすめします。

(最近増加しているご相談に対する事例を元にしています。早めのご相談をおすすめします。)

生成AIの動画投稿に注意

OpenAI社が新たな動画生成AI「SORA 2」の提供を開始しました
(参考:OpenAI社「Sora 2 is here」)。
リリース直後からSNS上では数多くの生成動画が投稿されており,既存の映画やドラマ,ライブ映像に酷似したものから,アニメーション作品まで多様です。「SORA」のロゴが動画内に表示されていなければ,生成AIによるものかどうかを判別するのは非常に難しくなっています。

学習データをめぐる懸念

SORA2の登場と同時に最も大きな論点となったのが,生成AIが用いる学習データです。
公開されている生成結果を見ると,商用ソフト化されているアニメーション作品や,70年代・80年代の映像まで学習に利用されていることがうかがえます。

これらは著作権や出演者のパブリシティ権を侵害する可能性が高く,本来であれば無断利用は避けなければならないものです。
しかし現実には,そうした素材を基にしたと思われる生成動画がすでにSNS上にあふれています。

OpenAI社は将来的に「オプトアウト方式」(原則として利用を許可し,権利者が明示的に禁止した場合のみ利用しない)を導入する意向を示していますが,この方式では権利者の側に過大な負担を強いることになり,権利保護が十分に機能しないという懸念があります。
(参考:日本経済新聞「動画AIのSora、著作物勝手に使う『オプトアウト方式』に不満の声」)。

クリエーター市場への影響

もう一つ見逃せないのが,クリエーターの市場への影響です。高度な動画が簡単に生成できるようになると,従来はクリエーターに支払われていた報酬が,AIサービス提供企業へと流れる構造が生まれかねません。特に中小規模のクリエーターにとっては,市場そのものが急速に縮小するリスクがあります。

技術の進化と社会の選択

生成AIの技術的進化は目覚ましく,これまでユーザーが手軽に享受できなかった映像や音楽コンテンツが瞬時に手に入る時代が到来しています。この流れ自体を止めることは,現実的には難しいでしょう。

しかし,日本はアニメーションやゲームなどのコンテンツ産業を国家戦略として重視してきました(例:内閣府「クールジャパン戦略」)。
この重要な産業を守り,生成AIが進化しても,クリエーターを保護する方向に社会がなっていくことを願わずにはいられません。

住宅セーフティネット制度の見直し

少子高齢化と単身世帯の増加を背景に,賃貸住宅市場でも新たな対応が求められています。こうした状況を踏まえ,住宅セーフティネット法が改正され,令和7年10月1日から施行されます。

改正のポイントは大きく分けて3つです。

  1. 要配慮者が入居しやすい市場の整備
    • 終身建物賃貸借の推進
    • 借主死亡時の残置物処理支援業務の追加
  2. 居住支援法人による入居中のサポート
    • 見守りや福祉サービスへの橋渡し
    • 要配慮者の家賃保証の原則引受け
  3. 地域の居住支援強化
    • 国土交通大臣・厚生労働大臣による基本方針の策定
    • 市区町村の居住支援協議会設置の促進

改正法により,高齢者の単身入居に伴うリスクの軽減や孤独死の防止といった課題にも対応できることが期待されます。

(参考 国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」)

資産管理法人の「乗っ取り」で不動産が売却された事例

最近,資産管理会社などの法人を「乗っ取って」,その所有する不動産を勝手に売却するという衝撃的な事例が報告されています。
(参考 楽待編集部『法人の登記を書き換えて「勝手に物件売却」、防ぎようがない乗っ取り型」地面師の犯行とは』)

不動産や法人登記に関わる士業としても見過ごせない,悪質かつ巧妙な手口についてご紹介します。


事件の概要:会社を乗っ取って不動産を売却

この事例では,次のような手順で法人登記が不正に変更され,不動産が売却されてしまいました。

・代表者の「住民票」を不正取得

犯人は,虚偽の債権回収等,何らかの手段で法人の代表者の住民票を取得。これにより,本人確認資料の偽造に必要な情報が揃えられました。

・運転免許証を偽造

住民票の情報をもとに,代表者になりすました偽造の運転免許証を作成。これが本人確認資料として使われたと見られています。

・実印の登録変更を実行

勝手に会社の実印を変更し,その印影で会社の役員変更への登記申請書の押印等を行います。しかも法務局は,提出書類が整っていれば受付してしまいます。

・会社の登記変更 → 不動産売却

役員変更登記を済ませ,法人の代表者が偽者に切り替えられた状態で,資産である不動産を第三者に売却。
登記簿上はすでに代表者として記録されているため,司法書士や取引先も気づきにくい構造となっていました。


なぜ司法書士も見抜けなかったのか

登記の実務上,提出書類に不備がなければ手続きは進んでしまいます。
また,法人代表者が新任された場合,本人確認書類と印鑑証明書等が揃っていれば,本人かどうかの真偽を登記官が積極的に確認することはほとんどありません。

司法書士であっても,実印変更や代表者の移動が合法的に見える限り,不正を疑う材料は乏しく,「よほどの警戒心と知識」がなければ見抜くのは困難です。


どう防ぐべきか→ 登記簿・印鑑証明の定期的な確認

会社側としてできることは,実印が勝手に変更されていないか,役員構成に異常がないかなど,定期的に登記簿を確認するしか方法がないです。


防衛策は有効か

今回ご紹介したのは,会社そのものを乗っ取って資産を売却するという大胆かつ悪質な手口です。
不動産や法人に関わる方にとっては,決して他人事ではありません。

正しい知識と警戒心を持ち,日頃から防止策を講じておくことが,大切かと思われます。

法的トラブルは早めの相談がカギ──司法書士・弁護士につないでおく大切さ

法律に強い人と知り合いになっておきましょう。

私たちの人生には,年齢や住んでいる場所によって,直面する法的トラブルの内容が変わってきます。
ときに自分が不利益を受けるだけでなく,知らないうちに他人に不利益を与えてしまっているケースもあるのです。


世代別にみるトラブル例

  • 未成年:いじめ,未成年による消費者トラブル(サブスク契約・高額購入)
  • 20代:就職や残業,貸金トラブル,副業やコネクションビジネスによる被害
  • 30代~60代:転職,長時間労働,パワハラ・セクハラ,ローンや債務問題
  • 70代~90代:認知症と財産管理,介護契約・相続トラブル

トラブルは「深刻化してから」が本当に大変

法的トラブルは,初期対応を誤ると後戻りが難しくなる傾向があります。
たとえば,

  • 債務が膨らみ手がつけられなくなる
  • 関係者が増えて処理が困難になる
  • 書類や証拠がどこかにいってしまう
    …など,放置すると状況が複雑になってしまいます

司法書士や弁護士と「つながっておく」という考え方

いざというときに,信頼できる専門家にすぐ相談できる関係を築いておくことがとても重要です。
「こんなこと相談してもいいのかな?」という段階でも,早めに方向性を定められることがあります。


法律相談の方法は?

  • 市町村の無料法律相談(市町村役場などで定期的に開催)
  • 法テラスの無料相談(所得制限あり)
  • 有料相談(じっくりと相談・代理対応など)

無料相談でも一定の方向性を見つけることができることは多いですが,
事案が複雑・広範囲な場合には,相談料を支払ってでもしっかり助言を受けることをおすすめします。


📞 お困りのことや,日常的なご相談もお気軽にどうぞ。

孫への授業料孫の学費を払ったら贈与税がかかる?―非課税にするためのポイント孫への授業料

祖父母が孫の大学の入学金や学費を代わりに払った場合,「贈与税がかかるのでは?」と心配される方も多いのではないでしょうか。

実は,払う「タイミング」や「方法」次第で贈与税がかかる場合とかからない場合があります
今回はその違いについて解説します。

(参考:産経新聞「孫の大学の入学金や学費をおじいちゃんが払っても贈与ではありません」)


贈与税がかからないための条件

以下の条件を満たす場合には、孫の教育費の負担に贈与税はかかりません
(※相続税法基本通達21条の3-4,5):

1.「扶養義務者」からの支払いであること

→ 扶養義務者とは,直系の血族(親や祖父母など)が該当します。
(相続税法第1条の2)

2.支払う目的が「生活費または教育費」に限られていること

→ 教育費には,学費,教材費,文具費などが含まれます。

3.支払は「都度・直接」必要な費用に充てられていること

一方,「預金や株,不動産の購入に使う」などは贈与とみなされる可能性が高くなります。


贈与とみなされるケースに注意

たとえば以下のようなケースでは、贈与税の課税対象となる可能性があります。

  • 学費名目であっても,事前にまとまった金額を渡しただけ
  • 渡したお金を孫が教育費以外に使ってしまった
  • 預金してしまった,使わずに残ってしまった

不安な場合は専門家へ

贈与税や相続税の判断は細かい条件や状況によって左右されます
少しでも不安がある場合には,税理士などの専門家に相談することをおすすめします。