共同親権に関する民法改正が衆議院を可決

離婚後の共同親権を認めた場合,争いの種が増えるかもしれません。

離婚後の親権を父母共同で行うことが選択できる「共同親権」と子の監護に関する費用の先取特権に関する民法改正の法案が衆議院を可決しました。(民法等の一部を改正する法律案

離婚後の親権は改正案においては,協議離婚の場合は離婚前に協議で「双方又は一方を親権者と定める」とし,裁判離婚の場合は,「父母の双方又は一方を親権者」に裁判所が定めるとしています。(改正案民法 第819条)

また,一般の先取特権の中に「子の監護の費用」が追加されています。(改正案民法 第306条第3号)

商工ファンド(SFCG社)の根抵当権仮登記は抹消できますか?

今回は実務についてですが,商工ファンドの「根抵当権仮登記の抹消」の「訴訟」と「登記」が,研修の同期の司法書士の協力を得て実施できましたのでご報告します。

かつて事業者金融(商工ローン)として事業していた「商工ファンド」社,後の「SFCG」社(参考 Wikipedia「SFCG」)ですが,サブプライムローン問題による金融不安や,同社自身の損害賠償や過払い金の請求により,民事再生→破産開始決定と経営破綻し,令和元年12月18日に破産手続の終結により,法人格を失いました。

登記事項証明書の例

同社の商工ローンを組んだかたが所有している不動産に,同社を根抵当権者とする「根抵当権設定仮登記」がされていることがあります。なぜ仮登記かというと‥登録免許税を1筆・または1棟1,000円に抑えるためのように思われます。
(通常の根抵当権設定は,極度額の0.4%)

登記の効力として,仮登記権利者が配当を優先的に受けようとする場合には,あらかじめ根抵当権仮登記の本登記をしておかなければなりませんが,同社はすでに破産手続終結をしてしまっているため,仮登記権利者である同社が自らなにか手続きをする見込みはありません。このことが通常の根抵当権設定登記以上に,仮登記の抹消手続きを難しくし,手間と時間がかかるようになっています。ほぼ間違いなく登記の抹消「訴訟」により,抹消登記手続きを進めることになります。

また,通常会社に対する登記や訴訟をする場合には,会社の代表者を相手したり,共同にて行いますが,同社は法人格を失っているので,すでに代表者は存在しません。この場合,裁判所に同社の「特別代理人」を選任してもらわなければなりません。

このように同社の根抵当権設定仮登記を抹消して,お持ちの不動産を身綺麗にするためには,様々な検討を重ね,パズルを組み合わせるような手順を踏むことが必要となります。

大まかな流れとしては,

1.根抵当権の「抹消原因」の検討
 ある程度時間を経過しているのであれば,「時効消滅」の原因を検討します。
 根抵当権の時効消滅の場合,元本確定後10年(債務)または20年(根抵当権自体)を経過するする必要があります。

2.「元本確定」要因の検討
 債務者の死亡などで元本確定事由を確認します。元本確定がなされないと,根抵当権の債務や権利自体は時効にかからないようです。(参考 平成30年2月23日最高裁,事件番号:平成29(受)468

3.証拠書類の収集
・SMCG社の登記事項証明書
・不動産の全部事項証明書
・元本確定事由の証拠書類(例 債務者の戸籍謄本等)
 を集めておき,後に証拠として裁判所に提出します。

4.訴状の作成
 訴状の起案をします。特に訴額ですが,土地は評価額の1/2(価額)の1/2(担保権),つまり1/4が訴額です。(参考:平成6年3月28日民二第79号高等裁判所長官 「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」)また,被担保債権の金額の方が低額な場合には,その額とされています。
建物は評価額の1/2(担保権)です。また,被担保債権の金額の方が低額な場合には,その額とされています。
訴額によっては簡易裁判所に訴えの提起をします。
事件名の例は「根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件」。

5.法務局に相談
 訴状をある程度起案できたら,管轄法務局に起案した「請求の趣旨」で登記できるかを事案によっては確認することになります。(事案の形態が初めての場合など)
 例 登記原因とその日付
 「年月日確定」(元本確定日,判例では「年月日元本確定」というのもある)
→「年月日時効消滅」(元本確定日の翌日) 

6.特別代理人の選任申立
 不動産の所在地を管轄する地方裁判所(不動産価格(訴額)によっては簡易裁判所)の根抵当権仮登記抹消訴訟の提起と同時に,特別代理人の選任申立てをします。事件の内容によっては,この特別代理人をあらかじめ知っている弁護士に依頼し,就任承諾書を徴求の上,「特別代理人候補者」を記入することで,裁判所に特別代理人を早めに選任してもらえます。

8.期日,判決後,判決書正本と確定証明書を取得して抹消登記をします。
 時期によっては,元本確定登記のため,代位により根抵当権者の「商号変更」や「本店変更」登記が必要です。

今回担当してみて,課題もたくさんありました。

特に司法書士の簡裁代理権や弁護士により,訴訟を遂行すれば,本人の口頭弁論への出席は必要ないですが,訴額が高く,訴状の作成業務として司法書士が関与する場合には,本人(原告)に「口頭弁論期日に出席」してもらい,「陳述」と「証拠調べ」をしてもらわないといけないため,綿密な打ち合わせが必要でした。また,訴状や特別代理人の選任申立書のほかにも,多くの訴訟に必要な書類のやりとりをするため,本人(原告)と何回もやりとりをさせていただく必要があります。

期間的にも,受任から抹消登記まで,4か月から6か月はかかる見込みですので,そのあたりを見据えた上で,各司法書士にご依頼いただければと思います。

嫡出推定制度の変更と懲戒権の廃止

本年4月施行の民法改正のうち,すでに懲戒権が廃止されています。
懲戒権の内容は以前ブログで説明したことがあります。
(当ブログ:「懲戒場とはなんだ」)

懲戒権は,令和4年法律第102号の民法改正により,廃止されていますが,この同じ法律改正に基づき,本年4月施行により「嫡出推定」制度が新制度に移行します。

変更点は,
 ・婚姻の解消から300日以内であっても,母の再婚後に生まれた子は,再婚後の夫の子と推定(民法第772条第1項,第3項)
 ・女性の再婚禁止期間を廃止(民法第733条削除)
 ・嫡出否認権を「子」と「母」,親権つきの「養親」,「未成年後見人」,「前夫」にも拡大(民法第774条第1項から第3項)
 ・嫡出否認の訴えの出訴期間を1年→3年に伸長(民法第777条)
(参考:法務省「民法等の一部を改正する法律について」)

また,本法律施行の1年以内は,施行前に生まれた「子」や「母」も,嫡出否認の訴えを提起して,血縁上の父ではない者が子の父と推定されている状態を解消することができるようです。(令和4年法律第102号改正民法 附則第4条第2項後段)
嫡出否認には,期間制限があり,訴え(訴訟の提起)が必要なので,弁護士,司法書士等にご相談ください。

ただし,嫡出否認の訴えは,従前の判例で血縁関係がなくても,親子関係が取り消せなかったり,意見の分かれる判断が生じているため(例:平成26年7月17日最高裁判決  親子関係不存在確認請求事件),場合によっては,個別の事情に基づく判断となるかもしれません。

官報の電子化

今まで紙の本が中心であった官報が,電子のものが基本となります。

官報は,ウェブサイトで改ざんされないように電子署名がされた上で公開されることが基本となるよう法律が改正されます。
(内閣府 第212回 臨時国会 「官報の発行に関する法律案」)

改正後の法律の施行後は,電子の官報が正式の官報となります。

過去の法令の全文検索

「国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学大学院法学研究科の佐野智也講師,増田知子特任教授,同大学院情報学研究科の外山勝彦教授,同大学数理・データ科学教育研究センターの駒水孝裕准教授らの研究グループ」は,明治19年から平成29年までに公布された法律と勅令を全文検索できるデータベースを作成・公開したとのこと。
(場所:名古屋大学 法令データベース

稀に古い六法の本や国会のデータベース等を血眼になって調べないと分からなかったのですが,ある程度すぐに検索できるようになったので,非常に古い法律を調べるには有効です。素晴らしいと思います。

特に民法が,「明治の」民法と,「家族法改正前」(昭和22年公布・施行),「口語民法化」(平成16年公布,平成17年施行),「債権法改正」(平成29年公布,令和2年施行,ほぼ現在)のものが比較できるところがすごいです。
(場所:名古屋大学大学院法学研究科 佐野 智也 講師 法律情報基盤

そういえば,司法書士の受験は,文語体の民法から勉強をし始めて,口語の民法に変わったあたりのときであったのを記憶しています。旧の文語体のほうが,漢文みたいに論理的で覚えやすかったのですが,時代の流れによって親しみやすくするため,口語体になっていったのだと思います。

ステマは,景品表示法違反

インターネットの世界ではステマが多いようです。

今日は,ステマ禁止の話をします。

不当景品類及び不当表示防止法第5条第3項の内閣総理大臣の指定により,令和5年3月28日内閣府告示第19号によって,「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」,いわゆる「ステルスマーケティング」が10/1から禁止されました。
(参考:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」)

事業者による広告なのか,個人の感想なのかがわからない状態によるサービスの説明には注意が必要かと思います。また,広告なのに広告であることを隠して,公に表示や誘引することだけでなく,企業自身が影響力のある第三者に,広告とわからない状態でこれらの表示や誘引を指示することも禁止に含まれます。
(参考:消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」)

宣伝は宣伝とわかるようにしてもらいたいものです。

所有者不明・土地建物管理制度と,管理不全・土地建物管理制度

管理などに障害のある不動産について,公的に管理する制度が4つあります。2つは前から存在する「不在者財産管理人」や「相続財産清算人」(旧相続財産管理人)によるものです。

あとの2つは,今年度から導入されたものとして,「所有者不明・土地建物管理制度」と「管理不全・土地建物管理制度」があります。

制度を紹介すると,

「不在者財産管理人」
従来の住所又は居所を去るなどして容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産の管理人がいない場合に,家庭裁判所が申立てによって,不在者財産管理人を選任します。(参考:最高裁判所「不在者財産管理人選任」)
管理範囲は「1人」単位の全財産となります。

「相続財産清算人」
相続人の存在,不存在が明らかでないときに,家庭裁判所が申立てによって,相続財産の清算人を選任します。(参考:最高裁判所「相続財産清算人の選任」)
管理範囲は「1人」単位の全財産となります。

「所有者不明・土地建物管理制度」
調査をしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物については,利害関係人の「地方裁判所」への申立てにより,その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができます。(参考:法務省「所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります。」)
管理範囲は対象不動産単位(共有であっても可)となります。

「管理不全・土地建物管理制度」
所有者による管理が不適当(例 ひび割れ・破損が生じている擁壁,ゴミの放置・害虫の発生)である土地・建物については,利害関係人の「地方裁判所」への申立てにより,その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができます。
管理範囲は対象不動産のみとなります。

このように,事案に応じて管理人を家庭裁判所または地方裁判所に管理人を選任してもらうことになりますが,今年度導入された2つは不動産の管理の障害の対応に特化した制度となっています。

不要な山林の処分

山林の処分は,難しいようです。

今日は,不要な山林の処分は難しいという話をします。

幻冬舎ゴールドオンラインにこんな記事がありました。

幻冬舎ゴールドオンライン:「相続財産に“田舎の山林”!? もらっても困る…「いらない不動産」を手放す方法3選【司法書士が解説】

3選とありますが,実際には4つ書かれています。

1.相続土地国庫帰属制度
2.相続放棄
3.共有物の放棄
4.業者による引き取りサービス

1つ1つ検討していくと,

「相続土地国庫帰属制度」
過去のブログ「不要な土地の放棄の問い合わせ増加」にも書きましたが,要件が厳しい制度です。

「相続放棄」
最も費用がかからず,有効な制度ですが,相続を知ってから3か月以内でないとできないことや,他の故人の財産と一緒にすべて放棄しなければいけないのが難点です。また,相続人全員が相続放棄した場合,相続財産清算人が選任できるまでは,管理責任が戻ってくる可能もあります。

「共有物の放棄」
なぜ,これが記事に書かれているのかは疑問ですが,共有者が存在し,共有者が引き取ってくれなければ,利用できない制度です。

「業者による引き取りサービス」
最も簡単に選べるサービスですが,それなりの費用や,ある程度の管理費用がかかることや,適正な業者を探すことが難しいです。業者の選定を間違えると被害にあったり,他人に被害を与えてたり,かえって状況をこじらせることがあります。

例えば,上記の引取りサービスの業者の中には,ダミーの株式会社等に土地を買い取りさせ,そのダミー会社を清算させないまま放置し,実際には土地を全く管理せず,公的機関も管理できない状態としてしまう業者があるため,このような業者に買い取りされた場合には,あとで大きな問題となるおそれがあります。
(参考:奈良国道事務所 用地第二課「解散又は活動実態がない会社名義の土地を取得する方法についての考察」)

山林を放棄するには,専門家に相談するなどして,長期的視点から計画して実行したほうが良さそうです。

地上権・永小作権が残っている場合があります

この4月の不動産登記法一部改正によって,地上権,永小作権,不動産質権,不動産賃借権や買戻特約の存続期間が満了している場合に,その権利者の所在が判明しないときには,土地建物の所有者は,単独で抹消申請することができるようになりました。
(不動産登記法 第70条第2項)

詳しくは以下の法務省の通達にあります。
法務省民二第538号:令 和5年3月28日 法務省民事局長通達 民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて・第2-2-(2)除権決定による登記の抹消等

今までは,永小作権などの権利で明らかに存続期間が満了している場合にも,永小作権者の協力なしには,抹消登記することがなかなか難しかったのですが,非訟事件手続法上の除権決定を得て抹消する方法も検討できることになります。

明治・大正の地上権,永小作権が土地に設定されているというのを相続手続きのときに稀に発見することもありますので,ご自身の土地についても確認してみてください。

永小作権の例