農地法の下限面積

農地(田や畑の土地)を売買等で取得する際,農業委員会の許可が必要ですが,許可の条件の一つとして,農業者であることが要件とされています。(農地法第3条第2項第5号)

農業者の要件として,「農地の権利取得後の面積が原則として都府県では50a,北海道では2ha以上になること」と定められています。
この50aは,「農業委員会が、農林水産省令で定める基準に従い、市町村の区域の全部又は一部についてこれらの面積の範囲内で別段の面積を定め、農林水産省令で定めるところにより、これを公示したときは、その面積」とされ,各農協委員会が別の面積に定めています。長野県は場合は以下のページに記載されています。
 下限面積設定状況:長野県

売買等により取得して,農地法上の許可を得る場合には,あらかじめこの下限面積以上の耕作をしているか,耕作を開始する必要があるため,注意が必要です。

個人間売買の契約不適合責任(担保責任)

フリマアプリやオークションサイトでも,担保責任を追求されるので注意が必要です。

近年,フリマアプリ等の使用による個人間取引の増加で,トラブルが増加しているようです。
(参照:国民生活センター「相談急増!フリマサービスでのトラブルにご注意-個人同士の取引であることを十分理解しましょう-」)

取引利用者へのアドバイスとして,国民生活センターでは,「フリマサービスは個人同士の取引であり、トラブル解決は当事者間で図ることが求められている点を理解して利用しましょう」としています。

これは,個人間でも,商品に対する担保責任があると考えられ,(買主の追完請求権 民法562条等),例えば,フリマアプリで購入した不良品を転売して,トラブルになるおそれもあります。

また,自身で買ったものが不良品と気がついても,すり替えたのではないかと反論される場合も存在します。
フリマアプリは,トラブルが多いという認識が必要なようです。

印紙の必要な書類とそうでない書類

色々間違えやすいです。印紙税には気をつけましょう。

コンビニで印紙の申告漏れのニュースがありました。
(朝日新聞:ファミマ、文書60万通に印紙貼らず 1.3億円納付漏れを国税指摘

継続取引を示す契約書類にも印紙が必要ですが,その後に記載された金額の入った合意文書や金銭のやり取りを記載した表(通帳)は,印紙が必要なる場合が多いので,注意が必要です。

立木の登記と明認方法

問い合わせを時々いただきます。

今日は,立木の登記と明認方法についての話です。

土地、建物の所有者は登記されますが、不動産や自動車,船以外の財産は,登記や登録されないのが一般的です。

ところが動産の中でも樹木は登記可能(立木登記)です。樹木も昔から,土地以外の物と別の財産として取引されることが多いからです。

また,立木登記以外にも木の所有者を第三者に知らしめる方法があります。この方法は、木に名前を表示しておく方法で行います。これを明認方法と言います。

明認方法は,法律上の具体的な規定はないものの,慣習や判例によって,第三者への権利主張(対抗力)が認められているのです。

このように,樹木の権利の保全には、立木登記と明認方法の二つの方法が使えます。

Web開示による計算書類等の提供制度

恒久的な改定ではないようです。

今日は,貸借対照表と損益計算書がWebでの開示により,株主に提供されたとみなされるよう,時限的にできるようになったことについて,話をします。

先日の会社法施行規則と会社計算規則の一部改正で,Webで開示して提供できるもののうち,定時株主総会の前に提供されるべき,事業報告と計算書類(貸借対照表と損益計算書)と事業報告書の一部が対象になりました。
(法務省:「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」)

今までは,貸借対照表と損益計算書が対象ではなかったのですが,(法務省:株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度について)これらが対象となったわけです。

ただし,定款の定めが必要なことと,令和5年2月28日までに招集の手続が開始される定時株主総会に限り可能になります。

家事調停のオンライン化

家事調停のオンライン試験が公開されたようです。
朝日新聞:離婚や相続のトラブル解決の「家事調停」、ウェブ会議でオンライン化
NHK:「家事調停」で試験的にウェブ会議導入 利便性向上などに期待

東京家庭裁判所,大阪家庭裁判所 ,名古屋家庭裁判所,福岡家庭裁判所 の4家庭裁判所で今月中旬からオンラインで家事調停ができるようになるようです。

家事調停事件の場合,管轄の合意が可能なので(家事事件手続法245条),住所が管轄外であっても,双方で上記4家庭裁判所に管轄の合意できれば,オンラインで家事調停できるようになります。

離婚の調停等は,DV被害者が調停に出席しなければならない場合も多いため,オンラインで調停ができるようになれば,かなり意義があることだと思います。

多様性に基づくカップルの契約

多様性のある社会をめざした,カップルのありかたの一助となりますでしょうか。

今日は,結婚以外の婚姻についての話をします。
理由があって民法上の結婚ができないカップルも一定数おられるかと思います。せっかく家族を形成しようといても,様々なハードルがあります。そこでそのようなカップルに提案できる契約やカタチを挙げます。

1.公正証書による合意契約
 法律上の婚姻も,契約の意味合いがありますが,これに変わる契約をするということになります。基本型は日本公証人連合会が出している「パートナーシップ合意契約公正証書」があります。

2.パートナーシップ証明
 自治体にパートナーシップの証明を出してもらい,パートナーであることを公に証明してもらうものです。前述のブロクで記載しましたが,全国で100以上の自治体で可能となっています。残念ながら長野県では,松本市のみです。
(当ブログ:同性婚の外国人パートナーに在留資格

3.任意後見契約
 お互いに(双方で)任意後見契約をすることによって,どちらかが財産の管理等が自身で,できなくなった場合に,パートナーが法律上管理できるようにするための契約です。また,病院での同意等,法律上の家族でなければできないことが,できるようになる場合もあります。(病院等の相手側に理解があった場合)

4.遺言書(遺贈や包括遺贈)
 相続ほど税務上の保護がないのが難点ですが,財産の相続(遺贈)を法律上の家族にさせず,パートナーにさせることが可能です。包括遺贈(一切合切ひっくるめた相続のこと)をすることにしておけば,ほぼ相続と同じ効果が発生します。(民法990条)

今後,法律が多様な社会をもっと理解されるように変わっていくことを望みます。

判例の誤字

一番,気になった誤字は,「大臣」→「大巨」でした。

最高裁判所のホームページでは,主要な判例を検索することができます。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1

今日は,最高裁判所のホームページにある判例の誤字について話題にします。

最近,日刊スポーツの記事で,誤字が多いという記事がありました。
(日刊スポーツ:「法務大巨」「検祭官」「弁護入」裁判所HPの判例データに多数の誤字脱字)

理由は,元々は判決書をスキャンしてPDF化し,OCRにしたため,誤字になったと思われます。

やはり一番気になったのが,「法務大巨」。人でもよく間違えることがあります。私たちは,似たような字でも,学生時代や日々の漢字の学習によって,意味を考え,理解して間違えなくなっていきます。

OCRの世界でも,ビッグデータや機械学習,ディープラーニングによって誤字がなくなっていくのでしょうか。そうなった場合の知識や経験を売り物にしている我々の存在意義はどうなるのでしょうかね。

「井溝」と「用悪水路」の違いがわからない

井溝の「井」は,「い」ではなく,「せい」とよみます。

相続登記の作業をしていると,登記の地目に「用悪水路」や「井溝」がときどき出てきます。

両方とも,水路のようですが,定義を確認してみると,「用悪水路」は,「かんがい用又は悪水はいせつ用の水路」,「井溝」は,「田畝又は村落の間にある通水路」となっています。(不動産登記事務取扱手続準則68条16号,19号)

定義を見ると,かんがい用の水路であれば,「用悪水路」,その他の水路は,「井溝」となるようです。同じ村にいないものが,水の行き先を確認して,用途がわかるのか,そもそも水路の先がなにかわかるのかという疑問が生じるところですが,今度機会があれば,実地で見てみたいところです。

登記情報提供サービスの料金改定

また,登記情報の価格が改定されるようですね。

平成28年9月までは,全部事項(不動産・商業法人)情報で337円
平成28年10月 令和元年9月までは,335円
令和元年10月から現在まで,334円
本年10月から332円となるようです。
(参照:https://www1.touki.or.jp/news/details/info21_007.html)

年々,価格が低下しています。指定法人の経営は,大丈夫なのでしょうか。