ブログ(業務日誌)

預り金の厳格な管理に向けて――当事務所の「預り金規程」制定について

近年,士業による預り金の横領事件が各地で報道され,司法書士を含む専門職に対する社会的な信頼が問われる状況が続いています。

当事務所では,依頼者の皆さまからお預かりする預り金の管理について,その適正かつ厳格な運用を徹底するため,「預り金規程」を制定いたしました。これは,司法書士による財産管理に対する社会的関心と信頼確保の重要性を踏まえた取り組みです。


規程の主な内容は以下のとおりです:

  • 預り金は原則として,当事務所の司法書士等の財産とは会計上も顧客ごとにも分離された「分別財産」として管理します。
  • 現金は,なるべく少額のみを耐火金庫で保管し,原則として速やかに事業用口座または預り金口座に入金します。
  • 現金以外の預り金については,通常は事業用口座を利用し,多額の場合や財産管理・遺産整理業務においては,依頼者ごとに分けた「預り金口座(決済用口座)」を活用して管理します。
  • 預り金は帳簿にて依頼者ごとに記録し,依頼があった場合には開示に応じます。
  • 司法書士が病気や事故等で業務継続が困難となった場合でも,補助者や相続人等による円滑な対応ができる体制を整備しています。
  • 預り金の入出金に関しては,司法書士と補助者が相互に監査を行い,不正が起きない仕組みを構築しています。
  • 必要に応じて補助者や関係者に対して教育を行い,制度の継続的改善に努めます。

本規程の全文は当事務所内でご覧いただけます。
ご不明な点やご質問がございましたら,どうぞお気軽にお問合せください。

令和7年度より「所得税の基礎控除」等が見直し

令和7年度(2025年度)の税制改正により、所得税の控除制度に複数の変更が加わる予定です。

この見直しは,実務的には令和7年の年末調整から影響が出るため,早めに情報を把握しておくことが重要です。


主な改正ポイント(予定)

1. 基礎控除の見直し

所得金額に応じた基礎控除額が引き上げられます。これにより、多くの納税者がより大きな控除を受けられる可能性があります。

2. 給与所得控除の見直し

現行の給与所得控除の最低保障額が増額されます。

会社員など給与所得者にとって,実質的な減税効果が期待されます。

3. 特定親族扶養控除の創設

新たに創設される控除制度で,

19歳以上23歳未満の親族(所得58万円超123万円以下)について,最大63万円の控除が認められます。

4. 扶養親族等の所得要件の見直し

扶養控除を受けるための扶養親族の所得要件が緩和されます。


実務対応はいつから?

これらの改正は,令和7年分の所得に対する年末調整から適用されます。

したがって,給与計算や年末調整を担当する経理担当者の方は,事前の準備が必須となります。

参考リンク

国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」

税理士法人 山田&パートナーズ:解説ページ


まとめ

今回の改正は,一見すると納税者に有利な内容も多く含まれていますが,控除額や要件が細かく分かれており,実務上の誤りにも注意が必要です。

必要に応じて税理士等の専門家への相談も視野に入れておくと安心です。

法的トラブルは早めの相談がカギ──司法書士・弁護士につないでおく大切さ

法律に強い人と知り合いになっておきましょう。

私たちの人生には,年齢や住んでいる場所によって,直面する法的トラブルの内容が変わってきます。
ときに自分が不利益を受けるだけでなく,知らないうちに他人に不利益を与えてしまっているケースもあるのです。


世代別にみるトラブル例

  • 未成年:いじめ,未成年による消費者トラブル(サブスク契約・高額購入)
  • 20代:就職や残業,貸金トラブル,副業やコネクションビジネスによる被害
  • 30代~60代:転職,長時間労働,パワハラ・セクハラ,ローンや債務問題
  • 70代~90代:認知症と財産管理,介護契約・相続トラブル

トラブルは「深刻化してから」が本当に大変

法的トラブルは,初期対応を誤ると後戻りが難しくなる傾向があります。
たとえば,

  • 債務が膨らみ手がつけられなくなる
  • 関係者が増えて処理が困難になる
  • 書類や証拠がどこかにいってしまう
    …など,放置すると状況が複雑になってしまいます

司法書士や弁護士と「つながっておく」という考え方

いざというときに,信頼できる専門家にすぐ相談できる関係を築いておくことがとても重要です。
「こんなこと相談してもいいのかな?」という段階でも,早めに方向性を定められることがあります。


法律相談の方法は?

  • 市町村の無料法律相談(市町村役場などで定期的に開催)
  • 法テラスの無料相談(所得制限あり)
  • 有料相談(じっくりと相談・代理対応など)

無料相談でも一定の方向性を見つけることができることは多いですが,
事案が複雑・広範囲な場合には,相談料を支払ってでもしっかり助言を受けることをおすすめします。


📞 お困りのことや,日常的なご相談もお気軽にどうぞ。

孫への授業料孫の学費を払ったら贈与税がかかる?―非課税にするためのポイント孫への授業料

祖父母が孫の大学の入学金や学費を代わりに払った場合,「贈与税がかかるのでは?」と心配される方も多いのではないでしょうか。

実は,払う「タイミング」や「方法」次第で贈与税がかかる場合とかからない場合があります
今回はその違いについて解説します。

(参考:産経新聞「孫の大学の入学金や学費をおじいちゃんが払っても贈与ではありません」)


贈与税がかからないための条件

以下の条件を満たす場合には、孫の教育費の負担に贈与税はかかりません
(※相続税法基本通達21条の3-4,5):

1.「扶養義務者」からの支払いであること

→ 扶養義務者とは,直系の血族(親や祖父母など)が該当します。
(相続税法第1条の2)

2.支払う目的が「生活費または教育費」に限られていること

→ 教育費には,学費,教材費,文具費などが含まれます。

3.支払は「都度・直接」必要な費用に充てられていること

一方,「預金や株,不動産の購入に使う」などは贈与とみなされる可能性が高くなります。


贈与とみなされるケースに注意

たとえば以下のようなケースでは、贈与税の課税対象となる可能性があります。

  • 学費名目であっても,事前にまとまった金額を渡しただけ
  • 渡したお金を孫が教育費以外に使ってしまった
  • 預金してしまった,使わずに残ってしまった

不安な場合は専門家へ

贈与税や相続税の判断は細かい条件や状況によって左右されます
少しでも不安がある場合には,税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

親がしている相続準備と,子どもがしてほしい相続準備のズレとは?

相続に備えて,親が行っている準備と,子どもが望んでいる準備には意外なズレがあるようです。このことについて,マイナビニュースにて興味深い調査結果が発表されていました。
(参考:マイナビニュース「親がしてくれている相続準備、1位は? 『遺言書作成』は2位」)


親がしている相続準備(上位3つ)

  1. 書類の保管場所の告知
  2. 遺言書の作成
  3. 資産のリスト化

子どもがしてほしい相続準備(上位3つ)

  1. 資産のリスト化
  2. 生前贈与
  3. 遺言書の作成

双方にズレがある理由は?

子どもの側では,単に「書類の保管場所を知るだけ」では不十分と考えていることがわかります。
近年では,通帳のないネット銀行口座、ネット証券口座、暗号資産(仮想通貨)などを持っている方も増えており,資産をリスト化しておかないと,相続人が存在を知らないままになってしまうリスクがあるからです。


「生前贈与」については慎重に

また、子ども側の希望には「生前贈与」もランクインしていますが,注意が必要です。
生前贈与は

  • 贈与税の税率が相続税よりも一般的に高額
  • 相続時精算課税制度を使うと,手続きが煩雑になる

などの理由から,慎重な検討が必要です。不利になることも多いです。


まとめ

どちらの立場にとっても,「資産リストの作成」と「遺言書の整備」は今後ますます重要になりそうです。
事前の準備で,家族間のトラブルや余計な負担を防ぐことができるので,早めに取り組んでおくことをおすすめします。

所有権登記に必要な「ふりがな」情報,住民票に記載がない自治体も…住民票にふりがながない場合

本年4月21日から,所有権に関する不動産登記の申請には,新たに「生年月日」「氏名のふりがな」「メールアドレス」の情報が検索用情報として必要となります。
(参考:新不動産登記規則第27条の2,第158条の39)


ふりがなの扱いに市町村で違いが…

ところが,長野市の住民票の写しには「ふりがな」が未記載であるのに対し,隣接する千曲市の住民票の写しにはふりがなが記載されています。

この「ふりがな」は、法務局への登記申請時に求められる情報の一つですが,申請の際には、公的な証明書に基づいて提出することが原則とされています。
(新不動産登記規則第158条の39第2項)


ふりがなが記載されていない場合は?

では,住民票にふりがながない場合はどうすればいいのか——。
これについては、法務省の通達(令和7年3月3日民二第373号)で,次のように示されています。

「氏名の振り仮名の記載がない場合でも、出生の年月日等を証する情報として取り扱って差し支えない。」

つまり,ふりがなの記載がない住民票でも,登記に使用することが可能とされています。


今後は戸籍から自動的に反映予定

総務省によると,令和年5月26日以降,戸籍にふりがなが記載される制度が開始されそれに伴い,戸籍に登録されたふりがなが順次住民票にも自動的に反映されていくとのことです。
(参考 総務省「住民票等への氏名の振り仮名の記載について」)

この対応が進めば将来的には全国で統一的に「ふりがな記載のある住民票」が取得可能になる見込みです。


運用に注意が必要です

今回の制度変更は急なものであり,現場でも混乱が見られます。
また,将来的には運用や通達の内容が変更される可能性もあります。

そのため,登記申請を予定している方や実務に携わる方は,最新の通達・運用の確認を怠らないようご注意ください。

Fedora41→42 のリリースとアップグレード

昨日,Fedora42が正式リリースされたようでしたので(参考 fedora MAGAGINE 「What’s New in Fedora Workstation 42」),メインサーバー等をFedora41から42にアップデートしました。
方法は以下のとおりです。

1.いつも通り,現状バージョンの最終アップデート

dnf upgrade --refresh
reboot -n

2.DNFアップグレードパッケージのインストール

dnf install dnf-plugin-system-upgrade

3.Fedoraの新バージョンのダウンロード

dnf system-upgrade download --releasever=42

4.GPG キーを検証します。(識別子が下記サイトと同じかを確認します)OKなら[y]を入力してenterを押します。

場所: Fedora はあなたの安全を守ります

OpenPGP キー ● をインポート中:
UserID: "Fedora (42) <fedora-42-primary@fedoraproject.org>"
識別子: ●
提供元: file:///etc/pki/rpm-gpg/RPM-GPG-KEY-fedora-42-x86_64

Is this ok [y/N]: y

5.ダウンロード後,リブートして更新

dnf system-upgrade reboot

6.各パッケージの正常性を確認します

更新後,1点問題点がありました。postfixが起動していませんでした。よって以下の設定をしています。

#古いパッケージを消す
dnf install remove-retired-packages
remove-retired-packages 41

#コンフィグファイルの更新
dnf install rpmconf
rpmconf -a
#何回かenterを求められる

「/etc/postfix/mail.cf」などが更新されて,加工前のものが「main.cf.proto」に入れられます。

そして,postfixのサービスが停止しているため,改めてスタートさせます。

systemctl start postfix

メールの送信を確認します。

#メールの送信
mail root

以下のエラーが出るため,mtaを変更

s-nail: Cannot start /usr/sbin/sendmail: executable not found (adjust *mta* variable)
alternatives --config mta

再度 mail rootを実行時メール

#メールの送信
mail root

#メールの受信
#→メールクライアントを使用

※追記 postfixの起動だけではメールの送信ができませんでしたので,alternativesを追加しました。

上場株式の評価と“通達6項”の影響

不動産や非上場株式など,評価の難しい遺産には,一定の評価基準が定められています。


🔹評価の基本ルール


🔹通達6項とは?

国税には「財産評価基本通達 総則6項」という特例があり,
通常の評価が困難な場合,国税庁長官の指示で別の評価が可能とされています。


🔹実際の適用事例


🔹今後の見通し

このような判例の続出により,通達の見直しが検討されている可能性もあるとのこと。
評価方法によって相続税額が大きく変わるため,慎重な対応が必要になりそうです。


気になる方は,税理士等の専門家への早めの相談をおすすめします。

不動産取引や工事契約での印紙税の取扱

以下の記事に印紙税に関する実務上のまとめがありましたので,参考までにご紹介します。
(THE GOLD ONLINE「不動産取引で収入印紙が必要になる文書」)


● 印紙税が必要になる主な文書

以下のような文書については,印紙税法により収入印紙の貼付が必要になる場合があります。

1.不動産売買契約書,金銭消費貸借契約書,領収書等

(印紙税法第2条,別表第1-6項 第1号文書、第17号文書)

不動産売買にかかる契約書,金銭消費貸借契約書(例:住宅ローン契約書),および領収書には,収入印紙が必要なケースが多く見られます。

2.工事契約書,注文書,注文請書

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

建設工事等に関する契約書や注文に伴う書類も,印紙税の対象となります。

3.不動産管理委託契約に関する契約書等

(同法 別表第1-6項 第2号文書)

不動産の管理委託に関する契約書も,「請負に関する契約書」として印紙税の対象になる場合があります。


●領収書の取扱について

不動産取引における領収書については,発行者が誰であるかにより、収入印紙が必要かどうかが異なります。

  • 個人が私的に発行する場合:
     → 通常、収入印紙の貼付は不要(営業に関しない受取書)
  • 法人や不動産賃貸業を行っている個人が発行する場合:
     → 収入印紙の貼付が必要になる場合が多いです

(出典:国税庁「営業に関しない受取書」)


● 印紙税の軽減措置がある文書

以下の契約書については,印紙税の軽減措置が講じられています。

  • 工事請負契約書
  • 不動産売買契約書

(出典:租税特別措置法 第91条)


●電子契約にすることで印紙税が不要に

契約書や受領書を電子化することにより,印紙税の課税対象外となります。

  • メール添付のPDF契約書
  • クラウドサインなどの電子契約サービスを使用した場合

これらは「紙の文書」に該当しないため,印紙税は課税されません

(出典:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱」)


⚠ 現状の課題:電子契約に対応していない事業者が多い

理論上は電子契約で印紙税を回避できますが,現時点では電子契約を導入している会社や業者はまだ少数です。相手方の合意やシステム導入も必要になるため,導入には一定の準備が必要です。


● まとめ

  • 不動産売買や工事契約などでは,収入印紙が必要な文書が多く存在する。
  • 契約書の電子化によって印紙税を回避することが可能
  • ただし,実務上はまだ電子契約に対応していない事業者も多い。

また,企業が対外的に出す文書には,印紙税のかかるものも多々あります。
特に法務部門では,対応のために印紙税に関する参考書を1部以上常備し,必要な場面で迅速に確認・対応できる体制を整えることをおすすめします。

文書作成時には印紙税の要否を事前に確認し,可能であれば電子契約化によるコスト削減も検討してみてください。

JUST PDFで電子署名? Acrobatなしでも申請用総合ソフトに対応

AcrobatがなくてもOK。 JUST PDF6で電子署名付き本人確認情報を作成し,申請可能でした。

通常,申請用総合ソフトで本人確認情報等を電子署名する際には Adobe Acrobat を使用しますが,JUST PDF6 でも作成・申請ができたのでご報告します。


✅ 事前準備:職印・印影の登録方法

1️⃣ 職印や印鑑の印影をスキャン (JPEG推奨,ペイントソフトでトリミング)
2️⃣ JUST PDF高度編集[ファイル]→[オプション]を開く


3️⃣ [電子署名]→[署名の表示設定]→[グラフィックあり]を選択
4️⃣ [画像ファイルから選択]→[参照]をクリックし,スキャンデータを指定


5️⃣ [OK]をクリックして完了


✅ JUST PDF6での電子署名手順

1️⃣ Wordや一太郎で本人確認情報を作成し,PDF化
2️⃣ JUST PDF高度編集でPDFを開き,運転免許証などを後ろのページに挿入


3️⃣ [セキュリティ]→[電子署名]→[証明用の署名(変更制限)を付与]を選択


4️⃣ マウスカーソルで署名位置を指定


5️⃣ [デジタルIDの追加]→[既存のデジタルIDファイルを指定]を選択し進める


6️⃣ 電子証明書(.p12)を選択し,パスワードを入力


7️⃣ [登録済みのデジタルID]が自身の氏名となったら[次へ]をクリック,再度パスワードを求められるので入力して,署名理由を[この文書の作者です。]とし,PDFに署名


8️⃣ 本人確認情報のPDFを再度ファイルとして記録するウインドウに推移するので,ファイルを保存して完了


✅ 署名の確認方法

🔹 JUST PDF高度編集で「有効性の不明な署名があります。」と表示されてもOK


🔹 Acrobat Readerで再度開き,時間が経つと [署名パネル] が表示される


🔹 署名欄の[>]マークをクリックして展開して,画面のとおりになっているかを確認する
一応,Acrobat等で作成した本人確認情報と署名パネルを比較して,「署名理由」と「変更は許可させていません」,「バージョン1」以外の場所に違う記載がないかを確認して,違いがなければ完了です。


✅ 申請用総合ソフトへの添付

上記手順で作成した 電子署名付きPDFを申請用総合ソフトで添付 すれば 問題なく申請可能でした。

Acrobatに依存しない方法を探している方は、ぜひ試してみてください