ブログ(業務日誌)

不要な山林の処分

山林の処分は,難しいようです。

今日は,不要な山林の処分は難しいという話をします。

幻冬舎ゴールドオンラインにこんな記事がありました。

幻冬舎ゴールドオンライン:「相続財産に“田舎の山林”!? もらっても困る…「いらない不動産」を手放す方法3選【司法書士が解説】

3選とありますが,実際には4つ書かれています。

1.相続土地国庫帰属制度
2.相続放棄
3.共有物の放棄
4.業者による引き取りサービス

1つ1つ検討していくと,

「相続土地国庫帰属制度」
過去のブログ「不要な土地の放棄の問い合わせ増加」にも書きましたが,要件が厳しい制度です。

「相続放棄」
最も費用がかからず,有効な制度ですが,相続を知ってから3か月以内でないとできないことや,他の故人の財産と一緒にすべて放棄しなければいけないのが難点です。また,相続人全員が相続放棄した場合,相続財産清算人が選任できるまでは,管理責任が戻ってくる可能もあります。

「共有物の放棄」
なぜ,これが記事に書かれているのかは疑問ですが,共有者が存在し,共有者が引き取ってくれなければ,利用できない制度です。

「業者による引き取りサービス」
最も簡単に選べるサービスですが,それなりの費用や,ある程度の管理費用がかかることや,適正な業者を探すことが難しいです。業者の選定を間違えると被害にあったり,他人に被害を与えてたり,かえって状況をこじらせることがあります。

例えば,上記の引取りサービスの業者の中には,ダミーの株式会社等に土地を買い取りさせ,そのダミー会社を清算させないまま放置し,実際には土地を全く管理せず,公的機関も管理できない状態としてしまう業者があるため,このような業者に買い取りされた場合には,あとで大きな問題となるおそれがあります。
(参考:奈良国道事務所 用地第二課「解散又は活動実態がない会社名義の土地を取得する方法についての考察」)

山林を放棄するには,専門家に相談するなどして,長期的視点から計画して実行したほうが良さそうです。

土地の国有化制度と悪徳商法

国有化の希望は増加していますが,悪徳商法への懸念があります。

相続土地の国庫帰属制度の申請の受付が4月から開始されているようですが,法務局への相談が相次いでいるようです。

国庫帰属制度は,固定資産税や管理等の負担を減らすには有効ですが,この制度の利用には厳格な要件があるため,今後悪徳商法の被害が増加する懸念があります。
(参考:読売新聞「土地を相続したけど使い道ない…「国有化」相談殺到、「所有者不明」防ぐ制度」)

例えば,原野が値上がりすることを謳ったり,放棄に多額の手数料が必要となったり,知らないうちに別の土地も買わさらたりする可能性も出てきます。

新たに被害が出ないよう,まず,土地の国有化制度は,要件が厳密であることを知っておく必要があるかと思います。
(要件例は,過去のブログを御覧ください。「不要な土地の放棄の問い合わせ増加」)

夏休みとお盆中のネットショッピングは注意

お盆とは,仏教の「盂蘭盆会」(うらぼんえ)から来ている言葉のようです。

このお盆中は,先祖供養や先祖を迎える期間とされており(参照:浄土宗「盂蘭盆会」,東本願寺「盂蘭盆会【うらぼんえ】」等),期間は地域によって差はあるものの,8月13日から8月16日とされていているようです。

この時期は,地方に人が動いたり,たくさんのかたが休みを取るため,宿泊業界や旅行業界は盛んのようです。

その分通販サイト等は,発送が遅れたり(例:郵便局「お盆期間中における郵便物・ゆうパックなどのお届け遅延に関するお知らせ」),管理が遅くなったりします。

偽サイトの対応が遅くなると考えられますので,注意が必要です。

印鑑証明書等のマイナンバーカードを利用した証明書の不具合

他人の証明書が発行された事例があるようです。
(参考 piyolog:「富士通JapanのMICJETで相次ぎ発生した証明書誤交付についてまとめてみた」)

8地方自治体で住民情報ソリューション「MICJET」という富士通社のスキームが起因しての不具合のようです。

高負荷,同時処理,修正漏れ等が不具合の原因にあげられているようです。

コンビニ交付の戸籍謄本,住民票,印鑑証明書を持ってきていただくかたもかなり増えてきました。発行に関わる手数料が安いことも要因かと思います。マイナンバーカードに関するトラブルが早く解消されることを望みます。

官報による決算公告は,わずか1.8%

株式会社で「官報」での公告を指定してあるうち,決算公告を実際している会社は1.8%にとどまるとのこと。
(参考:東京商工リサーチ「官報で決算公告、株式会社のわずか1.8%」)

非公開会社といってもある程度,債権者や従業員,地域等に社会的責任を果たすため,情報開示されることを望みます。

遺言書の保管を勧められた

あまり申請件数が多くないようです。

長野地方法務局では供託と遺言書の保管が,同じ窓口で行われています。

遺言書の保管は,3年位前から始まった制度で,自筆で書いた遺言を保管し,遺言の保管を相続人に通知することができ,家庭裁判所の検認を不要とする制度です。
(参照:法務省「自筆証書遺言書保管制度について」)

当該法務局の職員のかたから,申請件数が少ないということですすめられました。

全国で遺言書を作成している人が全体の7%弱に過ぎないというデータがあります。
(参考:平成29年法務省調査「平成 29 年度法務省調査我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務」)

政府や金融機関が個人投資を推進していることもあり,財産が複雑化し,個人の株式や投資信託の保有が増えており,個人資産も複雑化しています。
(参考:日本証券業協会「個人株主の動向について」)

よって,今後は多くのかたが資産を的確に後世に伝えるため,遺言の作成されることをおすすめしています。

FXや株式等の自動取引の怖さ

FXには,様々な自動取引のサービスが提供されており,便利である一定の財産を時間の経過によって増やしてくれる効果が期待できます。しかしながら,様々なリスクもあるようです。特に以下の2点の懸念事項が考えられます。

1.急激な値動きに耐えられないこと,あらかじめリスクから逃げておく準備がされないこと
 急激に価格が上下した場合には,そのリスクを追わなければならず,手動取引で経験のあるかたなら,イベント時期やニュース等によって,リスクをとって取引を控えようとしますが,自動取引の場合,値動きに合わせて自動で取引してしまいます。
(参考:インヴァスト証券「FXの自動売買とは?メリットやデメリット・初心者向けのコツについて解説」)


また,たくさんの自動取引がかえって急激な市場価格の変動を助長することが確認されています。
(参考:大和ネクスト銀行「ドル円の「フラッシュ・クラッシュ」なぜ、どのような時に起こるのか ?」)

2.手数料が多く発生するようにプログラムされている恐れがある
売買回数が多いほうが,取引業者の利益があがるため,自動取引の場合,投資者と利益相反状態になります。このことから,プログラムの内容によっては,手数料が多くなってしまい,かえって利益を損ねてしまうことがあります。
(参考:上記インヴァスト証券ウェブサイト)

また,あまり損が多額になってしまうと自動取引を中の取引業者が勝手に手動取引にしているケースもあるようです。
(参考:弁護士ドットコム「FX自動売買ソフトで大損、実は人間による「裁量トレード」だった…販売業者らに3000万円賠償命令」)

結局,生成AIやプログラムによる自動取引も人の判断に比べて良し悪しがあると言わざるを得ないと思われます。

相続人の相続(数次相続)の後相続に遺言書で全部相続(包括遺贈)があった場合,前相続の当事者は,全部相続者(包括受遺者)のみにできる

不動産の名義人甲が死亡し,その相続人が乙と丙であり,遺産分割協議未了の間に丙が死亡した場合,丙の相続人はA,Bの2人になりますが,丙が「全ての相続財産をAに相続させる」との遺言書を作成していたときには,前の相続の遺産分割協議の当事者は,乙とAの2名となります。Bの遺産分割協議への参加不要です。(登記研究831号参照)

ただ、Bから遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)がなされていない場合に限るようです。よって,遺産分割協議書に「Bから遺留分侵害額請求権の行使がない」旨の記載をするか,上申書を添付するかのどちらかが必要となるようです。
(出典:圓岡(まるおか)先生のホームページ「数次相続発生時に、相続人の一人に全部相続させる旨の遺言(包括遺贈)がある場合」)

司法書士同期に聞かれて,調べてみました内容ですが,法律上(民法 第990条 包括受遺者の権利義務)正しくても登記申請で使えるか,金融機関では,どうかという点では考えないといけないので注意が必要です。

信託財産は,譲渡所得の空き家特例が利用できない

国税庁から見解が出ています。
(国税庁:「信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について」)

空き家特例は,空き家である被相続人の居住用家屋と敷地(区分建物は含まない)を相続または遺贈で取得したもので,土地建物を第三者に売却し,売却金額が1億円以下の場合等ある一定の要件を満たすと,確定申告で,特別控除できる特例があります。
(国税庁:「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)

家族信託等で信託財産にした場合には,将来,対象不動産は空き家特例が利用できないようなので,信託契約時の信託財産の範囲に,居住用土地,建物を含むか否かを慎重にご検討ください。