取締役全員不在の場合

株式会社の取締役1名が亡くなり,他に取締役がいない場合,どうやって選任すればいいのでしょうか。

今日は,取締役不在の場合の選任方法を説明します。

取締役不在の場合に問題になるのは,株主総会の招集通知を発することできなくなるため,株主総会が開けなくなることです。

登記上の取締役や代表取締役が亡くなっているため,印鑑証明等が使えなくなり,取引できなくなるおそれがあります。

この場合,以下の方法が考えられます。

1.株主総会を株主全員の同意で開催する
(招集通知の省略 会社法300条)
2.仮代表取締役の選任
(裁判所による選任 仮取締役 会社法346条,仮代表取締役 同法351条)

司法書士が今までと全く違う経営者や相続人が取締役などに就任される場合には,株主全員の構成と全員の同意を確認させていただくことになります。株主が法人の場合には,その法人の代表者に確認させていただくようになります。

領収書から電子的な受取証書の請求も可能

紙の領収書だけでなく、電子的な受取証書を請求できることになります。

いままでは、弁済者(債務者)は、領収書の発行を要求することができました。
9月1日からは、電子での受取証書の要求ができるようになります。

(民法486条2項)弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない

書面か、電子かは、弁済者のほうが選択できるようになるようです。
【法務省:電子的な受取証書(新設された民法第486条第2項関係)についてのQ&A 参照】

会計参与の制度をもっと使いましょう

株式会社に「会計参与」という任意の制度があります。

今日は、会計参与のはなしをします。

会計参与は、株式会社において、取締役と共同して計算書類等(貸借対照表や損益計算書など)を作成する職務を行い(会社法374条1項)、株主・債権者にその計算書類等の備置と開示義務を負います。(会社法378条1項、2項)

また、会計参与は、中小企業で選任されることが想定されており【法制審議会会社法(現代化関係)部会第23回会議(平成16年6月2日開催) 議事録参照】、その資格は、公認会計士又は、税理士でなくてはなりません。

「第6回 税理士実態調査報告書」(税理士でないと見ることができないため内容省略)では、税理士のうち、会計参与に就任しているのは、2.0%にすぎないそうです。

あまり利用されていない会計参与の制度ではありますが、建設業の経営審査や会社の信用にもつながるため、今後の制度改正も含めた利用に期待したいところです。

公証制度にかかる電子化

電子化は、これからのようです。

今日は、公正証書作成の電子化のはなしをします。
公正証書は、公証人役場で費用を払って作成してもらいますが、法律上公正証書が要件となっていたり(例 株式会社の定款、事業用借地権契約書)、より公正証書のほうが、安全性が保てる書類等(例 公正証書遺言)があります。

これら公正証書の作成は、通常公証人と対面により、本人性と内容を確認しますが、近年、定款の作成など、テレビ電話によってできるようになりました。

公証事務嘱託
請求手続き
嘱託人と公証人の対面の有無交付手続き手数料納付
公正証書の作成対面対面書面交付原則対面
定款・私署証書の認証オンライン可
(事前に電話・ファックスの連絡必要)
原則対面
(一定の場合テレビ電話可)
(その場で電子媒体で手交可)
電子送信
ネットバンク可
日付情報の付与オンライン可
(事前に電話・ファックスの連絡必要)
なし電子送信原則対面
公証事務のオンライン/対面の別
【出典:内閣府 第14回 投資等ワーキング・グループ
  公証制度における対面手続のオンライン化(新経済連盟提出資料)

今後、本人の意思確認や、民事訴訟手続との連携が課題となっているようですが、電子化がもっと進んでいくようです。

夫婦別姓訴訟

まとめると、こうなります。

現在、
・日本人同士の法律婚
  同性を強制
・日本人と外国人の法律婚
  選択的夫婦別姓
  (法の適用に関する通則法25条、民法750条の適用除外)
  子供は日本国籍の姓を強制
  (戸籍法18条 日本の戸籍に入る場合)
・外国で日本人同士の法律婚
  婚姻した外国の方式を適用して、選択的夫婦別姓の婚姻は有効
  ただし戸籍法での記録の方法がない
  (東京地裁判例 日経新聞 夫婦別姓訴訟、戸籍記載認めず 海外婚は「有効」

今後、どのように議論が展開するのでしょうか。

名前のよみかたの法制化

氏名の読み仮名について、戸籍上で記載されるよう法制化が検討されているようです。
(時事通信 「氏名読み仮名、法制化へ 戸籍法改正案、23年提出目指す―法務省」)

以前から「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ(第3回)」においても議論されているようです。

現在では、出生届には、「よみかた」を記入し、住民基本台帳上(一部住民票上)で運用されていますが、戸籍には利用されていません。

よみかたの戸籍上の利用と変更について、法制化を検討しているようです。

以前、法務省民事局が設置した「戸籍制度に関する研究会」において、ふりがなの記載について、様々な課題が出されています。

1.ふりがなが法的に氏や名の一部となるか否か
2.全く関係のない読み仮名の取扱いをどうするか
3.届出に係る国民の負担と、市区町村の作業量が膨大であること
4.同じ氏の親族で、異なる氏の読み仮名が届け出られた場合の取扱い

養育費請求は、子の権利に

離婚した夫婦間の子の養育費について、子の権利として明確化する動きがあるようです。

今日は、養育費が子の権利である話をします。

従来養育費は、子の出費を主体的にしていない親からの、監護費の請求と考えられております。(民法766条)

ですが、養育費の支払いは、離婚親たちの全体の24%程度しか支払われていないとの調査もあります。
(出典: 厚生労働省 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 17 養育費の状況

養育費は、扶養義務として、子の権利でもあります。(扶養義務の履行、民法877条)

今後その権利を明確化し、離婚時にその内容盛り込むことにするよう、検討されるようです。
(出典:朝日新聞WEB 養育費請求は「子の権利」 民法明記を法制審検討へ

子の貧困の防止に、一助になればと思います。

簡易裁判所の民事トラブルの解決手続き

全国に簡易裁判所は、438箇所あるらしいです。(出典:簡易裁判所で民事トラブル解決ー4つの手続ー

今日は、裁判所においても広報されている、簡易裁判所での民事トラブル解決手続きについて書きます。

民事トラブルとは、主に貸金や代金支払請求、敷金の返還請求、建物の明渡の請求などです。これらのトラブルを裁判や裁判外の方法で相手と交渉し、解決を図る際に、通常裁判所の手続きを利用するわけですが、その請求金額によって、簡易裁判所を利用します。

上記の簡易裁判所のホームページによると、以下の方法が説明されています。

1.通常訴訟(簡易裁判所)
2.少額訴訟
3.民事調停
4.支払督促

上記それぞれ、認定司法書士であれば、代理手続き、書類の提出のみでしたら、すべての司法書士が受任可能です。(司法書士法3条2項、1項4号)

どの手続が適しているのか、または裁判外の交渉が適切なのかは、司法書士、弁護士にご相談いただければと思います。

オーナー商法は原則禁止へ

オーナー商法の原則禁止とした、預託法の改正が閣議決定されたようです。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6386723 出典:朝日新聞デジタル)

オーナー商法は、特定の商品を購入しオーナーとなり、その商品を購入先の通してレンタルしたり、斡旋した会社が利用することにより、配当を得るというビジネスモデルとなります。対象の商品の金額が高いため、被害も大きいということが特徴であり、近年では安愚楽牧場やジャパンライフ等で被害が出ていたのが記憶に新しいところです。

実際には、購入した製品に実態のないことが多数なため、詐欺的商法であることが多いです。

預託法改正案では、オーナー商法を原則禁止し、罰則を強化し、犯罪収益の没収を可能にするとのこと。

現在、消費者庁で把握しているオーナー商法による事業は、40社程度だそうです。
(出典:消費者庁 特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会 「資料2 販売を伴う預託取引などの現状について」)

法律の改正によって、被害の防止と被害の迅速な回復を狙っていますが、オーナー商法的な儲け話には、安易に乗らないことが1番であると思います。

民事信託の役割

信託とは、他人に財産をあずけて、その財産をある目的をもって管理や処分しててもらうことをいいます。(信託法2条1項)
成年後見制度における成年後見は、財産やを成年後見人に管理してもらうことを一つの目的としていますが、信託と成年後見と違うところは、信託は預ける人のすべての財産を対象にせず、一部の財産を対象とすることができ、目的も管理に限られず、多様な目的を設定することができます。(信託法3条各号)
また、信託のもう1つの役割としては、信託が終了した後、財産をもとの所有者以外に帰属させることができる点です。(信託法182条1項各号)この機能は、受託者が亡くなった場合の相続先、遺贈先を指定できる遺言に類似しています。
このように、成年後見や遺言より柔軟に財産の処分をすることができることが信託の強みといえるでしょう。